JOLLYBOYの経済学入門

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6.経済無策&愚策へ怒りの鉄拳 (2002年12月26日記載)

 過去5回に渡って、経済理論などを交えながら、日本経済の変遷や日本経済が現在抱える問題などを振り返ってみた。しかし今回は番外編と言うことで、経済理論などは脇へ置いておいて、感情論を展開しよう。この日本の経済に対する政治の無策と愚策に、おもっいきり怒りをぶつけてみたい。
 何が頭にくるかって、これほど国民を馬鹿にした政治が過去あったろうか…。2002年度の一般会計補正予算案が閣議決定されて(12月20日)、歳出額が2兆4590億円。ところが、2兆5400億円が税収不足で、国債を「新たに」4兆9680億円も発行する。結局2002年度の国債発行額は、34兆9680億円にも上るのだ。更に次の数字を見て、皆さんどう思われるか?2003年度の政府予算の財務省原案の数字である。
一般会計の総額:81兆7900億円(2002年度比0.7%増)
一般的歳出額:47兆5900億円
国債発行額:36兆4500億円(国債依存度は44.6%と戦後最悪。)
 この数字の異常度がお分かりになるだろうか?来年には、国債の総発行額がなんと450兆円になる。赤ちゃんや子供も全部含めて、国民一人当たり350万円にもなる額だ。残念ながら今の日本経済の実力では、国債の利息の支払いですら目一杯の発行額だ。普通の企業ならとっくに倒産、個人なら破産宣告している。あまりにも大きすぎて、この数字がどれだけひどい状態なのか今ひとつピンとこないと思われるので、これを私たちの生活に置き換えて考えてみよう。
 私の年収が、例えば460万円だとする。ところが、食費や光熱費や税金や家賃などの支出総額が年間820万円もあっとする。それで、不足分の360万円を借金で補った。毎年そんなことを繰り返しているうちに、借金の総額が、なんと4,500万円にも達してしまった。元金はおろか利息も返せず、消費者金融ですらもはやお金を貸してくれないので、破産宣告をすることとなってしまった…。国の状態は、そんな状態なのである。個人の家計なら、普通はそんな事になる前に、無駄な支出を見直す。高級車に乗っているなら大衆車にする、外食の回数を減らす、お小遣いを減らす、あらゆる手段を使って家計を赤字にしないように手立てを尽くすだろう。
 ところが、国にはそれができない…国の借金を増やすだけでなく、増税策が次々に練られ、各種税金控除も無くなる方向だ。多くの企業や政治家、官僚達が、寄ってたかって税金を食いつぶそうとする。税金だけでなく、国の借金まで増やす始末だ。会計監査院の調査報告によれば、僅かな省庁の無駄な支出だけで数千億円に上るという。全省庁の無駄な支出は、おそらく数兆円に上るだろう。未だに道路公団を始め多くの特殊法人や省庁が、効率化・民営化などの改革の道を阻んでいる。多くの政治家や官僚、企業が後ろ盾となって、税金の自分たちへの還流を減らさないように、揺さぶり・脅し・恫喝・収賄・ありとあらゆる手段を使っている。言える事は、
①それらに流れる多額のお金は一部の限られた企業と関係者の利益となるのであって、民間企業の一般サラリーマンの懐に還元されることはほとんど無い。
②未だに時代遅れのニューディール政策のような公共土木投資・工事を続けても、国の経済は絶対に回復しないし、恒常的・全国的に雇用が増えることはない(第一、そんな古い政策をしているのは、先進国中日本だけだ)。
③将来、国債の償還が無理となって国が大混乱に陥っても、借金を増やした政治家達は絶対に責任を取る事は無いし、責任を認めることすらしないだろう。
 この今の日本の状況と言うのは、第二次世界大戦前の日本の経済状況にとても良く似ている。簡潔にその流れを見てみよう。我々は、歴史から学べるはずだから。

 第一次世界大戦後、日本は「株式相場の暴落」を口火に「戦後恐慌」が発生。ついで関東大震災が起こって、日本経済は大打撃を受けた。その際、一部の「銀行の不良な経営状態」が明るみに出て、「中小銀行が破綻」し始めた。全国的に金融恐慌が広がったが、政府は「モラトリアム(支払猶予令)」と「日本銀行からの巨額の救済融資」で、なんとか鎮火する。一方で、財閥は金融・貿易・運輸・鉱山業などを基盤として資金を蓄え、金融・流通面から産業支配を進め、同時に「政党との結びつき」を強めていった。再三の恐慌に対して、政府は「日本銀行券増発による経済政策」を取ってきたが、これは「経済破綻を一時的に先へ伸ばしただけ」で、世界恐慌が発生する頃には、日本は深刻な恐慌状態に陥った。「企業の操業短縮、倒産、賃金引き下げ、人員整理」が行われて、「失業者が増大」した。都市部の失業者が農村に帰農したため、農家の困窮も著しくなった。その後、政府は「金輸出再禁止」を断行し、日本は「管理通貨」制度の時代に入る。円為替相場の下落により輸出は伸びていったが、輸入はアメリカへの依存度が高まっていった。そして日本が日中戦争へ突入していくと、日本は「統制経済」への道を辿って行く。財政の膨張はあいつぐ「増税」をもたらしたが、増税によっても「軍事支出」中心の「膨張した財政支出」をまかなうことはできず、「多額の赤字国債」が発行された。日本銀行券が増発され「悪性のインフレが進行」し、「中小企業の強制的整理」も進められ、遂には物資は配給制となった。国際的にも孤立していき日米通商条約廃棄も発効して、アメリカからの物資輸入に頼っていた経済は完全に破綻しつつあった。日本はアジアの資源を求めて「大東亜共栄圏」という大義の下アジアへの侵略を開始し、太平洋戦争への道へと進んでいく。経済が破綻し、物資の輸入もままならない日本が、列強諸国に勝てるはずもなく、日本は敗北し降伏することとなる。

 これは、第二次世界大戦前の日本経済の変遷の概略だが、今の日本の状況とたいへん似てはいないだろうか。「大恐慌」と「大不況」、「軍事支出」と「公共土木工事支出」、「財閥」と「大企業・特殊法人」、「インフレ」と「デフレ」と言葉を入れ替えるだけで、今の日本の経済状況にほぼ当てはまってしまう。大不況で企業の倒産・リストラが相次ぎ、失業者が増大する。政府は民衆ではなく大企業の方を向いていて、税金を土木建設工事に投入していく。経済政策は、増税や国債の乱発に頼る無策で、根本的な問題解決を先送りするだけ。政府の金融への介入もその場しのぎで、遅々として不良債権処理は進まない。結局、日本経済は絶望的に破綻しつつある…。例え破綻したとしても、戦時中の軍事政権下の政治家達と同様、おそらく誰も責任を取らないだろう…「時代のせいだった。仕方のない状況だったのだ」と。この歴史の流れで言うと、「大東亜共栄圏」に匹敵するような、とんでもない「大義名分」が今後登場してくるかもしれない。
 しかし、私はあえて言う。具体的に、過去の一人一人の名を挙げる。時代のせいなどでは、決してない。愚策を勧めた○○党の○○議員、あなたのせいだ。改革に抵抗した○○省の○○さん、あなたのせいだ。贈収賄で政策を捻じ曲げた○○社の○○社長、あなたのせいだ。政府の御用学者となって愚策を煽った○○総研の○○先生、あなたのせいだ…と。あなた達のせいで、年間400万人もの人が失業しているのだと。あなた達のせいで、年間3万人以上の人々が自殺しているのだと。あなた達のせいで、国の借金が異常に増えたのだと。あなた達のせいで、年金や税金を正直に払っている市民が、正当な見返りを受けられないのだと。あなた達のせいで、学校を卒業した若者が社会へ羽ばたけないのだと。あなた達のせいで、子供たちの未来が暗く閉ざされているのだと。私は、怒りを持って選挙で一票を投じる。こんなひどい愚策を押し進めた者、もしくはそれを黙って傍観していた者の名前を、私は絶対忘れない。力弱き市民に対する権力者の酷い報いを、私は忘れない。追い詰められて力尽きてこの世を去った人々を、私は忘れない。今も苦しんでいる人々の魂の叫びを、私は忘れない。しかし怒りの鉄拳を、彼等に食らわせることはできない。怒りを暴力に変えることは、決してしてはならないからだ。だから、私は怒りを持って選挙で一票を投じよう。少しでも、明るい明日が来ることを願って。


 

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