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1.資本主義の原理 (2001年6月18日記載)
日本のお偉い学者って、眉間に皺を寄せて、簡単なことをわざわざ難しい言葉を使って「どうだ、俺は専門家だぞ。参ったか!」みたいな人って多いと思いません?むしろ難しいことを分かり易く伝えるのが、能力のある人のすることだと思うのだけどね…。僕は、こういった分野の能力もないし学者でもないので、まず自分がちゃんと理解できるように、自分なりに噛み砕いて経済の問題を考えてみた。
で、第一回目は「資本主義の原理」。いい意味でも、悪い意味でも、現代の世界経済は資本主義がベース。で、その原理について考えてみたい。
・「市場経済」…資本主義を語るには、やっぱり市場経済について語らなあかんと思うの(何故、関西弁?)。市場経済は、自由経済って言っても良いのよ。社会主義の計画経済に対して、自由主義の市場経済。どういうことかと言うと、言葉の字句通り、自由に物品の売買を行うこと。誰かが、「MDウォークマン売りたいなぁ」と思っていて、一方で別の人が「1万円ぐらいだったら、そのMDウォークマン買うでぇ」と持ちかける。「おぉ、1万円なら売ったるでぇ!」ということで売買成立。これが市場経済なわけ。
でもね、市場経済にはある法則があるの。例えば、S社がカセットテープのウォークマン作ったら、それをみんな欲しがったとする。でも、生産が間に合わないよね、日本中の人が欲しがったら。ウォークマンの数は少なくて、欲しい人の数は多いから値段は高くても売れるのね、どんどん。そこで、T社もM社もA社も儲けたいから、真似して同じような製品を作ってどんどん売るわけ。でも、どんどん売れると、みんながウォークマン持ってるようになるから、だんだん売れなくなってくる。2台も持っててもしょうがないから…。そこで、どこの会社も値下げを始める。ウォークマンにあんまり興味なかった人や様子を見ていた人も、「う~ん、半額なら買ってもいいかぁ」って買う人も出てくる。そういう人も買い尽くしてしまうと、値段を下げてもなかなかウォークマンは売れない…。ウォークマンに色々付加価値(ラジオ聞けたり、録音できたりと工夫する)を付けたり、デザインを変更したり。一時期は売り上げが上がるけど、結局また売れなくなる。
しかし、時代が進んでCDウォークマンやMDウォークマンが発売されだしたら、みんなまだ持っていないし品数も少ないから、高い値で売れるわけ。でも、また繰り返しだから、いつしか半額でも売れなくなるわけ…。それを作ってる人の労力やコストは同じなのに、値段が下がっていくの。好況と不況の繰り返し。これが市場経済、つまり自由であることの宿命。人気のある品物は値が張っても売れるし、売れない品物の値は下がるし、いつしか消えていく…。これは、街中の小さな企業でも、国の屋台骨を支えるでっかい企業でも、まったく原理は一緒なのでございます。
・「資本主義」…上記のことを踏まえて、資本主義のことを考えてみる。資本主義を一言で言うと、「効率よく経営して、少しでもたくさん儲けようぜ!儲けたら、それを元手にしてもっと儲けようぜ!」ってことかな。(この時代に「"ピン"の製造工場」の話では"ピン"とこないので)、もう一度ウォークマンを登場させましょう。あくまで例ですが、B社という従業員10名の小さな町工場がカセット・ウォークマンを作って、とても売れたとします。とても儲かったので、工場の設備を増設し従業員の数も50名に増やしました。B社は努力して、CDウォークマンを開発、大ヒットしたのでまた儲かる。そこで、またまた資本を充実、工場を拡張し社員を100名に増やしました。次には、MDウォークマンを開発しそれもそこそこ売れ、設備をまた拡大、従業員は200名になったとさ!まあ、これは絵に描いたような机上の成長ですが、「効率的に儲けて成長していく」という架空の例。産業革命の時みたいに技術がどんどん発達している時とか、戦後の日本の高度成長期の時とかは、正にこういう時代。みんなが何も持っていないから、「洗濯機が欲しい!」「炊飯器が欲しい!」「冷蔵庫が欲しい!」「クーラーが欲しい!」「車が欲しい!」って色んな製品が売れに売れて、企業がどんどん儲けて大きくなっていったし、仕事も給料も増えていった。みんな万々歳!資本主義、市場経済の真骨頂!(けれどね、いつまでそんな時代は続かないの、都合よく技術革新なんて永久には続かないから。この辺のことは、別の機会に)。
・「資本主義の光と影」…じゃあね、資本主義が万々歳で、みんなを幸せにしたかと言うとそうとも言えないんだよね。なんせ「効率よく儲ける」が第一の主題だから、それ以外のことでは色々矛盾が出てくるの。儲け以外のことは二の次で、大気汚染に水質汚濁に土壌汚染…公害の垂れ流しだったのね、環境問題なんて口が裂けても言えなかった。それと、競争社会による人間性の喪失…負け組みには、未来がないみたいな…。気が付いたら、昔はほとんどなかった心と体の病気の増大。かつては予想もできなかったような、凶悪な犯罪の続発。
そして、もう一つの大事な問題。日本は間違いなく資本主義国家として、自由経済を基盤として歩んできたはずなのに、資本主義の原則を大きく踏み外してしまった。本来、潰れるはずの銀行やゼネコンを始めとする企業を潰さないで、ほとんど無駄に税金を投入し続けている。売れないもの、必要のない企業は消え、新しい売れる製品を作る企業、必要とされる企業が生まれてくる-という法則を自ら破ってしまった。一部の官僚や政治家の関係する企業や組織を計画的に残すと言うのは、ただ税金が浪費され闇の社会に消えていくという問題以上に、危険をはらんでいる。本来新しい産業に流れていく「人材」と「資金」を、古い殻・古い皮袋に閉じ込めているということ。どんな時代にも必ず変革期は訪れ、一時的に様々な負の問題が噴出するのは、残念ながら歴史的が証明する避けられない事実。その流れを停止させたら、もっと大きな災厄がこの国を襲い、この国は立ち直れないかもしれない…と僕は恐れている。日本は、低迷してしまった「自由経済」に、最悪シナリオの「計画経済」という足枷をはめているとしか思えない…。
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