カプチーノ限定・超短編小説 01

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キャロルと踊ろう


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 哲也は、先日届いたばかりの真っ赤なカプチーノで買い物に出かけた。たかが近くのスーパーへ買い物に行くだけだったが、とても気持ちの良い秋晴れの午後だったので、分割式の3枚のルーフを外してフル・オープンにしてみた。街中では、まだまだ珍しい車だったので、時折子供達が振り向く。哲也は、オープンエアーを満喫した。こいつに乗っている時だけは、会社での嫌なことも忘れられる。彼はまだ社会人一年生だったから、なかなか思ったように仕事がはかどらない。はかどらないどころか、失敗して上司に叱られることもしばしばで、フラストレーションの溜まる生活を送っていた。しかし、5年ローンを組んでようやっと手に入れた念願のカプチーノ、この夢の車が彼をストレスから開放してくれるのだ。
 買い物を終えると、哲也はキーを差し込んで発車しようとした。と、その時である。
「ねえ、この車、どうしてお屋根ないの?」
カプチーノを覗き込む、一人の男の子。年の頃にして、5~6歳と言ったところか。哲也は、子供が苦手である・・・うるさいから。
「僕、ひろし。5歳。お兄さんは?」
ああ、面倒くさい・・・しかし、哲也は答えた。
「僕、哲也、24歳。」
「へえ、僕のお母さんより若いや。」
当たり前である。子供は、執拗に聞いてきた。
「ねえ、どうしてお屋根ないの?」
人見知りしないと言うか、人懐っこいと言うか、馴れ馴れしいと言うか・・・。適当に答えよう。
「あのね、"ひろし"君。僕は貧乏なんで、お屋根が買えなかったの・・・。」
"ひろし"と名乗る子供は、シュンとなってしまった。
「そうなの・・・。お兄さん、かわいそうだね。」
5歳の子供に、同情されたくはないものである。と、次の瞬間、怒鳴る声が聞こえてきた。
「浩ちゃん!知らない人とお話ししちゃいけないって、何度言ったら分かるの!こっち来なさい!」
子供の母だった。まだ若いようである。彼女は、そう怒鳴ると哲也に冷ややかな一瞥をくれて、子供の手を引いて彼の視界から消え去った。まったく、これでは俺の方から子供に話し掛けた"変質者"か"誘拐犯"扱いではないか。まあ、仕方ない・・・子供のすることに、一々怒っていても仕方ない。彼は、カプチーノのエンジンをかけるとその場を去った。

 買い物を終えた明子は、子供を黄色のキャロルの助手席に押し込んだ。買い物袋を後部座席に押し込むと、運転席に座りキーをひねった。運転しながら、明子は浩を叱った。
「まったく、この子は!知らない人と話しちゃいけいなって、何度も言ってるでしょ!」
「もう、知らない人じゃないよ!もう、名前も知ってるもん。てつや兄ちゃんだよ。」
ああ言えばこう言う・・・まったく、誰に似たのだろう。分かれた元亭主、雄二の性格に似たのだ・・・顔は、私似で可愛いのに。それにしても、"てつや兄ちゃん"って・・・勝手に友達にするな、相手は迷惑だろう。
「24歳だって。」
24歳、私より2つも年下じゃないの。24歳で、あんな出たばっかりの新車のオープン・スポーツカーを乗り回しているなんて、どうせどこかのボンボンよ。お父さんが金持ちで、ねだって買ってもらったに違いないわ。私だって、人に負けないくらい車好きなのよ。このキャロルだって、結婚する前に自分の貯金で買ったのよ!こつこつとチューンナップもしたのよ!大好きなこのキャロルを売らずに、女手一つで子供を育ててきたのよ!どれだけたいへんだったか分かる?ああ、イライラするわ!馬鹿元亭主に、ボンボンの兄ちゃん!
浩が、隣の席で何か言っている。
「お母さんは、偉いね!」
はあ?何のこと?この子は、いったい何を言っているの?
「てつや兄ちゃんね、お金なくて車のお屋根買えなかったんだって。でも、お母さんの車は、お屋根付いているもんね!凄いね!」
明子は、キャロルの天井を見上げた。屋根が付いている・・・確かに、雨はしのげてるわね。神様に感謝しなくちゃいけないかしら?"…てつや兄ちゃん"とやらは、面白い事を言ったもんだ。子供相手じゃ、ボケても突っ込んではくれないぞ。明子の目に、何故か薄っすらと涙が浮かんできた。どうしてかしら?明子は、ちょっと冷静になった。
 しかし、まあ、例えボンボンとは言え、ちょっと悪いことをしたかな・・・。どうせ、うちの子の方が先に話しかけたのは間違いないし、向こうは迷惑してたはずだし。やっぱり今度会ったらちゃんと謝ろう、"てつや兄ちゃん"に。まあ、二度と会わないかもしれないけれど・・・。

 それから一週間後、哲也はまたスーパーに買い物に来た。その日は曇天で雨が降りそうだったので、カプチーノの屋根は外さずに来た。買い物を終え、カプチーノで駐車場を立ち去ろうとすると、大声がした。
「てつや兄ちゃん!」
えっ?俺に、弟はいないはずだが。ふと、声の方に目を向けると、先週の子供だった。健気にも懸命に走ってくるではないか。
「良かったね、兄ちゃん!」
はあ、何が?一体、何を言っているのだ、この子は?確か"ひろし"だっけ?
「車のお屋根、買えたんだね!」
おお、そうか、屋根か。確かに今日は屋根が付いているな。俺も、屋根が買えるほどお金持ちになったか!そんな事を考えていると、子供を怒鳴る声が聞こえた。
「浩ちゃん!」
その声には、聴き覚えがあるぞ。その声の持ち主が、息を切らしながら走ってきた。おお、今日も俺は変質者か誘拐犯扱いか?臨戦モードに入るぞ、俺は。
 しかし、子供の母親は、カプチーノの中の哲也に向かって、にっこりと笑い、頭をペコリと下げるのだった・・・。

 あれから、15年の歳月が経った。哲也は、今でも真っ赤なカプチーノに乗っている。しかし、乗っているのは助手席だった。運転席には、一人の青年が座っている。
徹夜は、その青年に言った。
「う~ん、まだまだコーナー出口付近のスロットルワークが甘いな、浩。」
「無理言うなよ、免許とってまだ3ヶ月だよ、父さん!」
フルオープンにした真っ赤なカプチーノがコーナーを駆け抜けると、まっ黄色のピカピカのキャロルがコーナーに入ってきた。そして、赤いカプチーノと黄色のキャロルは、風のように視界から消えていった。


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