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第六章 十字架上のイエス
鞭打ちの後、イエスは重い十字架を担がされて歩かされています。アントニア要塞から死刑場のゴルゴダの丘まで、自分が掛けられる十字架をイエス自身が担いで行くのです。鞭打ちで傷ついた体や、茨の冠を被らせられた頭からは血がしたたり落ち、しかも重い十字架を背負わされているのです。
しかし傷だらけのイエスを前にして、クロディウスも部下たちもイエスを救うどころか、何一つ手助けをしてあげられないのです。大切な部下を癒してくれたイエスに、恩で報いることができないのです。クロディウスの百人隊の任務は、暴動が起きないように市内の警備をすることであり、この与えられた命令に背いて持ち場を離れることはできません。彼らはローマ帝国軍団の兵士なのです。
イエスは、ゴルゴダと言う場所で十字架に付けられました。手や足は、釘で十字架に打ち付けられました。
イエスの左右両隣りには、犯罪人が十字架に付けられました。人々は、イエスを見て嘲笑いました。犯罪者の一人も、罵りました。 「おい!他人を救ったのなら、自分も救ってみろよ!」
すると、もう一人の犯罪人が、それをたしなめました。
「おまえは神を恐れないのか!同じ刑を受けているのに!俺たちは自分のやったことの報いを受けているのだから、この刑も当然だ! でも、この方は、何も悪いことなどしていないではないか!」
彼は、イエスに向かって言いました。
「イエスよ、あなたの御国においでになる時に、私を思い出してください」。
すると、イエスは彼に言いました。
「あなたは、今日私と一緒に楽園にいます」。
イエスが十字架に付けられた後、全地は暗くなり、それが正午から3時まで続きました。イエスは、大声で叫びました。
「父よ、私の霊を御手にゆだねます」。
こう言って、イエスは息を引き取りました。
警備をしていた百人隊長クロディウスと彼の部下たちは、これらの出来事の一部始終を見ていました。百人隊長は感動で満たされ、十字架を見上げて言いました。
「本当に、この人は正しい人だった」。
百人隊長の心には、イエスの言葉と十字架の姿がしっかりと刻まれました。
この百人隊長が、その後どうなったのかはどこにも書かれていません。長年の軍団の勤めを果して無事にローマに帰ったのか、それともどこかの戦闘で戦死したのか、今では誰も知りません。しかしこの百人隊長の信仰は、聖書に記録されて現代まで伝えられているのです。
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