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第二章 クロディウス、百人隊長になる
その後20年に渡って、クロディウスは数々の戦いを勇敢に戦い、そして生き抜きました。
時には、戦闘で深手を負った仲間を自陣まで背負って戻ったこともあります。脚を負傷した仲間の背嚢を背負って、辛く長い行軍をしたこともあります。クロディウスは口数の少ない…どちらかと言うと物静かな男でしたが、そんなクロディウスの行動を見て、次第に仲間や上官からの信頼は増していきました。
彼は、十人隊長、旗手、副官と昇進していき、遂に入隊から20年目に百人隊長となりました。親のコネを使ったり、上官へ袖の下を渡して昇進する兵士たちも軍団の中にはいましたが、クロディウスはその勇敢さ、忠実さ、実直さ、つまり実力で百人隊長まで昇進したのです。しかし彼が百人隊長になるまでに、数々の戦闘で多くの仲間や部下を失いました。クロディウスは、先に死んだ彼らのことを忘れたことは一日たりともありません。
クロディウス百人隊の部下の兵士たちは、長年、彼と一緒に戦った歴戦の勇士たちです。部下の副官も騎手も兵士たちも、みな彼の命令に忠実に従い、規則正しく生活し、数々の困難な戦闘で勇敢に戦ってきました。クラディウスは、彼らを誇りに思っています。
ある年、クロディウスの百人隊が属する歩兵隊が、辺境の地に遣わされることになりました。ローマ帝国に抵抗する不穏な動きのあるイスラエルと言う地域への派遣です。
全部で6つの百人隊が、ローマから遠く離れた辺境の地へと向かいました。総勢5百名弱の小規模な編成の追加的派遣です。クロディウスたちの歩兵隊は、行軍の末にイスラエルのエルサレムと言う都にたどり着きました。そこは、四方を高い壁で囲まれた立派な城塞都市です。
一世紀のエルサレム/CG by JOLLYBOY
兵士たちは、ヘロデ王宮のそばにある塔に分宿することになりました。ファサエルの塔、ヒビックスの塔、マリアンメの塔の3つの塔の内、クロディウス達はファサエルの塔に宿泊しました。これらの塔はダビデの塔と呼ばれていますが、実際はローマ帝国に取り入ってユダヤの王となったヘロデが建てさせたものです。
ローマ兵が宿泊したダビデの3つの塔/CG by JOLLYBOY
ヘロデ王は生粋のユダヤ人ではなかったので、ユダヤの血統のハスモン王朝の人々を利用しましたが、必要なくなると彼らをすべて殺害しました。これらのことをユダヤの人々はよく知っていたので、ヘロデはユダヤの王でありながら、ユダヤの人々からたいへん嫌われていました。イスエラルはヘロデの死後、ヘロデ・アルケラオス、ヘロデ・アンティパスといった息子たちによって分割統治されましたが、アルケラオスの失政でユダヤはローマ帝国の直轄支配地となります。ユダヤ人はこのヘロデ王を嫌うと共に、彼らの領土を支配するローマ帝国も嫌っていました。
エルサレムの人々は、新たにやって来たローマ帝国の兵士達を恐れながら離れて見ています。クロディウスは、戦場で数々の敵の兵士の目を見続けてきました。彼は、その目が恐れだけでなく憎しみも含まれていることをすぐさま感じ取り、それを心に留めました。
その後、クロディウスの百人隊は、イスラエルの北方”カファルナウム”に派遣されました。
※注:当時、百人隊長昇進には親のコネや袖の下を使うものもいたようですが、多くの隊長は現場での叩き上げの兵士で、十人隊長や旗手、副官などの地位を得て、時間と経験を重ねて隊長に昇進したと考えられています。
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