最近のコンパクト・ミニバン考

(2004年9月26日記載)

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 さて、こんなご家庭があると考えてもらいたい。東京の下町に住む祖父母二人、夫婦二人、そして社会人の長男と大学生の長女の6人家族。そんな家庭での会話。

お父さんが言う。
「車を買い替えようと思う。どんな車が良いかな」。
長男がすぐさま反応する。
「2シーターのオープン・スポーツカーにしなよ。(心の声・・・デートに使いたいし、峠も攻めてみたいし)。」
長女が反論する。
「二人乗りなんて無理に決まってるでしょ!大型の4WDレジャー・ビークルにして!(心の声・・・サークルの友達とキャンプへ出かけるんだから)。」
妻が即座に言い放つ。
「何言ってるの。軽自動車で充分よ!(心の声・・・家計は火の車なのよ。)」
お爺さんが口を挟む。
「でも6人は乗れないと、そろって食事に出かける時とか困るぞ。(心の声・・・わしらを無視するでないぞ)。」
お婆さんがポツリと言う。
「そう言っても、大きな車はうちの車庫には入りませんよ。(心の声・・・うちは狭いんだからね)。」
そして父。
「う~ん。(心の声・・・上司とゴルフとか行くし、セダンが欲しかったのになぁ。駄目だろうなぁ・・・)。」

 さて、父は悩む。一家の家長として、みんなの要望をうまく取り入れなければならない。お爺さん・お婆さんから孫まで家族全員が乗れて、しかも遠出もできて、かつ経済的な車。それらの要件を満たしている車・・・そう言った背景で、流行しているのがミニバンだろうと思う。

 僕が家から駅に行く途中の家で、とても大きな駐車場を持っている一軒の家がある。そして、たくさんの車が停められている。そこには、セダン(ゴルフなどのオフィシャル用か?)、3列シート・ミニバン(多人数お出かけ用か?)、スポーツカー(趣味のスポーツライディング用か?)、軽自動車(近所の買い物用か?)と、すべての用途に対応できるよう車種が揃っているのだ。ただし、こんなに車の数を揃えるのは、一般家庭では到底無理です。そこで、先ほどのお父さんのように悩むこととなるのだ。
 さて、お父さんは心はミニバンに傾いていって、カタログを集めた。しかし、問題がまた一つ出てきた。最近のミニバンは、装備が豪華でけっこう高い。安いものでも200万円近くはするし、平均でだいたい200万円から300万円くらいする。中には400万円以上する物もあるではないか。これでは、「家計が火の車」と言ってる妻を納得させられない。そして、大きさの問題。どれも、これも、けっこう大きい。売れ筋のミニバンの全長をざっと見てみよう。トヨタ・アルファード、4,800mm。トヨタ・エスティマ、4,780mm。日産・エルグラント、4,835mm、日産・プレサージュ、4,870mm。ホンダ・オデッセイ、4,765mm。マツダ・MPV、4,815mm。「なんだ?どれもこれもでかくて、5メートル近いじゃないか!ミニバンと言うのに、ちっともミニじゃないぞ!うちの車庫は4メートル、ぎりぎりで入れたとしても4メートル・プラス・二十~三十センチぐらいが限度だ!全然駄目じゃないか!」と、嘆くお父さん・・・。家に車庫があるのに、別に車庫を借りなくてはならないではないか・・・またまた、妻を怒らせてしまうではないか。実際、都会の家の車庫と言うのは、とても狭い。車庫へ通ずる裏道も、けっこう狭い。4.5メートルを超えるミニバン、ましてや5メートル近いミニバンを買えない(※使えない)家庭は多いと思う。狭い裏道を切り替えしたり、狭い車庫に入れるのは、毎日買い物に出かける主婦にとっては、特に面倒くさくて辛いものである。
 そんな悩みを解消してくれるのが、コンパクト・ミニバン。"ミニ"なバンを、更に"コンパクト"にしたものである・・・つまり"小型"の"小型バン"と言う分けだ。狭い駐車場にも入るし、価格も130万円~200万円。父は、安堵の溜息をついた。これで、家族全員の要望がだいたいかなえられる。まあ、息子のスポーツカーと言うのはちょっと無理だが、スポーティ・バージョンを買うか、エアロパーツぐらいは付けてやっても良いかな。こうして一家の大黒柱である父は、ようやく買う方向性を決めたのだった。
 さて次は、いよいよ具体的な車種の選択である。父は、ディーラーを回ってカタログを集め回るのであった。


 日産・キューブ・キュービック(銀座・日産本社ギャラリーにて)

 僕は、ちょくちょく車のギャラリーやディーラーに寄った時、新車のシートに座る。一列目だけでなく、二列目にもしっかり座る。三列シートがある場合には、当然三列目も座ってみる。雑誌で書かれている事も参考にするが、自分で感じた事がより確実だと感じるからだ。日産のキューブ・キュービックにも、銀座の日産本社にてすべてのシートに座って見た。3.9メートルと言う全長に三列シートを組み込んだことには敬意を表したいが、やはり無理がある。全列座るとなると、とにかく狭い。三列目は狭いとか言う問題ではなく、175cmの身長の僕が座ると膝が立ってしまうのだ。体育座りほどではないが、これは疲れる。また、スライドドアではないので、三列目のアクセスは楽ではない。大人6名ないし7名が、旅行で遠出するのは辛いだろう。仲間が集まった時に、「近くのファミリーレストランにみんなで一台で出かけようか」と言う時に使うのが、この車の三列目の正しい使い方だと思う。もしくは、小学生ぐらいまでの小さな子供の専用席。エンジンは1.4リッター直列4気筒DOHCで、出力は98ps。最小回転半径は4.7mと、たいへん小回りが効く。

 ホンダ・モビリオ(千代田区・事務所近辺にて)

 さて、コンパクト・ミニバンの中でも、古株になってしまったモビリオ。車である事をある意味やめており(ある意味いさぎ良い)、路面電車的、もしくは未来型乗合自動車的な三列自家用車。全長が4,070mmあることもあり、キューブ・キュービックよりは、若干三列目のシートの余裕がある。しかし、膝周りはやっぱりきつい。モビリオは、ここまで高さが必要なのかと言うぐらいに車高が高いので、頭上の余裕はある(あり過ぎて不安と言う声も)。この車の正しい使い方は、普段は三列目を畳んでおいて広い荷室にして4~5人乗車で使い、久しぶりの友人や祖父母が来た時に三列目を広げて使う・・・と言う感じかなぁ?スライドドアなので、キュービックより三列目の乗降は若干楽。エンジンは1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンで、出力は90ps。VTECエンジンを搭載した上級グレードもある(110ps)。最小回転半径は、5.3mと少し大きめ。

 トヨタ・シエンタ(隣町の川口市内にて)

 さて、最も後発となったのが、このシエンタ。デザインは、そんなに嫌いじゃない。後発で、かつ全長も4,100mmあることもあり、三列シートの乗り心地や乗降のしやすさは三台の中で最も良い・・・かと言って広いと言うほどでもないが、三車の中では最も窮屈感が少ないようだ。スライドドアなのも良い(三列シート車は、スライドドアの方が良さそうだ)。エンジンは1.5リッター直列4気筒DOHCエンジンで、出力は110ps(4WDは105ps)。小回りは、5.3m。

 上記の三車種は、いずれもCVT(無段階変速機)車があり(モビリオは全車CVT)、滑らかな走りが得られる。シフトには、いずれもスポーティのSモードが有り、俊敏な加速などが欲しい時に利用できる。僕が前出のお父さんの立場で、三車種の中でどれか選べと言われたら、今ならたぶんシエンタを選択すると思う(最近のトヨタは、大企業に関わらず細かい所を突いてくる)。


 ダイハツ・ドミンゴ(市内にて)

 さて、前出の三種以外にも、(あまり知られていないが)コンパクト・ミニバンが存在する。軽ワゴンをベースにして、全長を少し伸ばして三列シート化したワゴンだ。僕が時折利用している駐車場ご主人が、ダイハツ・ドミンゴに乗っているので見せていただいた。キューブ・キュービックより遥かに短い全長3,525mm(凄くない?)なのに、室内は以外に広く、三列目のシートも立派に広いのだ。出力61psの1.3リッター直列3気筒OHCエンジンを積む7人乗りで、RRと4WDの2タイプがある。僅か3.5mほどの全長に、7人がそれなりに座れて、フル乗車でも荷物を積むスペースも若干ある。これだけでも、この車は存在価値があると思う(走行性能等は、また別の問題であるが)。ただしこの車は既に生産中止なので、中古車でないと手に入らない。
 現在このタイプの車は、ダイハツのアトレー7に引き継がれている。エンジンも4気筒のDOHCエンジンにバージョンアップし、出力は92psと大幅に向上している。大きさも若干大きくなり、全長3,765mm(それでも充分に小さいと思うが)。質感も、かなり良くなっている。
 対する軽自動車界のライバル、スズキも軽ワゴンベースのコンパクト・ミニバンを出している。エブリー・ランディがそれだ。エンジンは1.3リッターの直列4気筒SOHCエンジンで、出力は86ps。全長は、3,710mm。エンジン出力ではアトレー7に軍配が上がるが、エブリー・ランディは車重が100kg程軽く、左側のスライドドアは電動式が標準で、電動ステップも乗降時に自動で出るなどより親切で、三列目への乗降性もキャプテンシート採用で容易になっている(ただし3列目に大人3人が座るのはきつい)。僕は(実際の走行性能次第によってだが)、エブリー・ランディも悪くないかなぁ・・・と思ったりもする。

 なんだかんだ言ったが、コンパクト・ミニバンに"本格的なスポーティな走行性能"とか"スポーツカーのようなかっこ良さ"を期待してはいけない。カーマニアのお父さんには辛いところだけれど、コンパクト・ミニバンは、ミルク臭、生活臭がするのは仕方ないのである・・・だってそう言う用途のために開発しているのだし、ぎりぎりまでコストを下げているのだからね。

 ところで、今年のニュースで、「ミニ・バンの大型化傾向」が指摘されていた。小さい(ミニ)バンを再び大きくしたと言う事は、単に「普通のバン」に戻ったと言うことではないだろうか(笑)。


うちの子のプルバック"シエンタ"


参考・引用文献
日産キューブ・キュービックのすべて  (モーターファン別冊)
最新ミニバン全モデル・購入ガイド2004  (JAF出版社)
国産&輸入車購入ガイド (JAF出版情報)
間違いっぱなしの車選び (中経出版)      他



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