ハインケル・キャビン
(2006年12月10日記載)
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長らく日本が世界に誇るスモールカーの軽自動車とその先駆者達を取り上げてきたが、今回は日本の軽自動車よりも小さい車を紹介したい。以前、メッサーシュミットKRやイセッタと言った一世を風靡したキャビン・スクーターを取り上げたが、このハインケル・キャビンもそんなカテゴリーの一台。もちろん、現在は日本の街中で走行をするのを見る機会の無い車です(…まさか乗ってる人いる?)
ハインケル・キャビン(石川県・日本自動車博物館にて)
ハインケル社はドイツの有名な航空機メーカーだったが、第二次大戦後は自動車生産メーカーに転身した。戦後は、3輪トラック用エンジンや汎用のエンジンを生産。55年頃から2人乗りの3輪乗用車の生産を始める。こうして生まれたのが、このハインケル・キャビン。1956年3月にハインケル・キャビン150、153、154が発売される。欧州で、イセッタと共にミニカーブームを巻き起こした小型車だ。
この車は、色んな面で独創的だ。ボディ前面が開くドア、特異なウィンドー等は、既存の自動車設計のセオリーからは大分外れている。自動車と言うよりも、最大効率を追求した移動手段として開発されて、このような外観になった。モノコックボディなので、イセッタよりも軽量で、安定性も優れている。航空機メーカーだった富士重工のスバル360と同様、航空機的な発想と技術によって生まれたスタイルである。
ハインケル・キャビンは、175ccの空冷4サイクル単気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動する(※エンジン出力や最高速度などに関するデータが、現在手元にない)。車輪はイセッタやメッサーシュミット同様、前2輪、後1輪の3輪である。エンジンを200ccに拡大したモデルでは、後輪は安定性を確保するため複輪化されている(※河口湖自動車博物館の展示説明プレートでは、195ccのエンジンが"2サイクル"の単気筒となっているが、2サイクルと4サイクルのどちらの情報が正しいのだろう?)。元航空機メーカーの車と言うだけあって、実際に乗った感じも小型飛行機そのままで、ハンドルを引くと空中に舞い上がるのでは…と思える運転・走行感覚であると言う。
ハインケル・キャビンは、後に英国のトロージャン社でも生産・販売された。今でも時折、英国の田舎町で見かける事があるそうだ。どこの国にも、エンスージアストと言うのはいるものである。
前方に開くドア(河口湖自動車博物館にて)
←中はこんな感じです(河口湖自動車博物館にて)
見る者を驚かせるユニークなスタイルが特徴のハインケル・キャビンであるが、1人ないし2人が移動するには十分なスペースと性能を持っていて、現在でも通用する合理的な設計だ。走行性能や安全基準等を現在の基準に適合させて、今の時代にこんな車を復活させたら、みんな驚くだろうなぁ~。だって、もの凄く小さいし、車の前が開いて人が降りてくるのだから…。みんなが驚いて振り向く…そんな光景を、街中で見てみたい。
参考・引用文献
pen (TBSブリタニカ)
かわいいクルマで遊びたい (二見書房)
河口湖自動車博物館説明プレート
他
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