ダイハツ・コペン
(2006年8月6日記載)
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日本が世界に誇る(?)究極のコンパクトライトウェイトたる、軽スポーツカー紹介の第四弾。カプチーノも、ビートも、AZ-1もバブル時代の産物。21世紀の壁を超える事無く、生産終了した。そして、世紀が変わって2002年6月、久々に軽のオープンスポーツカーが登場した。ダイハツのコペンである。
僕も軽スポーツカー好きとして、このコペンの登場にはかなりワクワクした(…カプチーノよ、すまん)。雑誌を買い、ディーラーへ行ってカタログをもらい、お台場のパレットタウンに行ってシートに座り、コペンのミニカーが出る度に買い増しした。それほどのワクワク感は、本当に久しぶりだった。
コペンに乗る私(パレットタウン・メガウェブにて)
ダイハツのコペンが、一般の人々の前に登場したのは、1999年の東京モーターショー。当時のコペンの綴りは、"K(軽)"の"OPEN"と言う事でKOPENだった(市販時には、"C"OMPACTの"OPEN"と言う事でCOPENとなる)。2回目の登場は、2001年の東京モーターショーだった。
コペン開発のきっかけは、1990年代に登場したカプチーノであると言う。「いつかうちもあんな車を作ってみたい」…そう思うダイハツマンは、少なくなかったと言う。ダイハツは、当時リーザを2座席にしたオープンモデルを出したが、本質はお洒落2シーターであって本格的なスポーツカーとは程遠いものだった。新ジャンルでの新開発は、コストもリスクも大きいのだ。この辺の事情はスバルも同様で、当時ヴィヴィオに分割ルーフを装着した2+2のオープンモデル、Tトップの発売で留まっている。これもスポーツカーとは程遠い存在だった。
そして、1990年代の軽スポーツカー達が世紀を超える事無くすべて生産中止となり、新世紀の扉を開いた21世紀、ついにコペン発売のタイミングがやってきた。東京モーターショーで絶大な支持を集め市販の期待が高まったコペンが、市販化のための開発の期間を経て、2002年6月、遂に発売されたのである。
グリーンのコペン(地元市内にて)
軽規格が1998年に改定された事により、コペンには車体のサイズ面でバブル期の軽スポーツカーよりも、若干アドバンテージがあった。軽規格サイズの拡大は、取り分け安全性確保やスペース拡充には有効である(※そのための軽規格の変更でもあったのだが)。よってサイズは全長3,395mmとバブル期軽スポーツより10cmも拡大し、全幅・全高も1,475mm、1,245mmとそれぞれ拡大している。しかし、そのぶん車重も増加し、830kgとなっている(※ディタッチャブルトップ車は800kg。AT車は、各10kg増し)。バブル期軽スポーツカー達より約100kgの車重増加だが、安全面の強化やボディ拡大、アクティブトップ関連の重量を考えれば、むしろ+100kgの増加で済んだのはたいへんな努力を要しただろうと思われる。ダイハツの開発者達が、いかに軽量化に心血を注いだかが理解できる。
イエローのコペン(事務所近辺にて)
エンジンは、直列4気筒DOHC16バルブ・ターボ仕様エンジンがフロントに搭載される。出力は、軽自動車の上限値の64ps(6,000rpm。最大トルクは11.2kg/3,200rpm)で、たいへんパワフル。エンジン自体は、ムーブやMAXに搭載されるものと基本的に同じ。この辺は、カプチーノもビートもAZ-1も皆同じで、少量生産車は既存車両のユニットを流用せざるを得ないのが台所事情。だが、ターボチャージャーはコペン専用の新設計。最大加給圧は、0.95kg/cm3に高められている。また、全車が平成12年度基準排ガス規制値に対して有害成分を50%以上低減した「優-低排出ガス車」の認定を受けている。ミッションは、スーパーアクティブシフト付きの4速ATか、5速MTの選択。
コペンのプラットフォームは、ミラ等の乗用車に使われているものを基本にしているが、オープンボディのための補強が随所になされている。結果、エンジンパワーを上回る高いボディ剛性を確保している。軽量化のため、骨格や補強材に高張力鋼板を用いた他、ボンネット、ルーフ、トランクリッドにアルミを用いている。衝突実験での安全性も、かなり良い結果を出している。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式、リヤがトレーディングアーム&トーションビーム式。バネとダンパーの組み合わせは標準仕様の他、デタッチャブルトップにスペシャルチューンド仕様が採用されている。ブレーキは、前輪がベンチレーテッドディスク(14インチ版ディスクローター!)で、後輪がL&Tドラム。制動力は十分。タイヤサイズは165/50R15で、大径の15インチを採用。アルミホイールは6本スポークで、もちろん14インチのブレーキに対応している。
コペンは前置きエンジンの前輪駆動と言うFF車なので、スポーツカーとしてどうなの…と言う心配が発売当初は多かったと聞くが、ダイハツ開発陣のシャシーやサス等の熟成により、走行性能はかなりレベルが高いらしく、ハンドリングは軽快かつ正確、ロール剛性も高く、コーナーでも安定感があると言う。
後方から見たコペン(パレットタウン・メガウェブにて)
コペンが優れているのは、その走行性能だけではない。エクステリアデザインやオープン・ルーフのメカニズムがとても良い。
デザインは、オプティから受け継がれるティアドロップ型を踏襲しつつ、オープンモデルに相応しいエクステリアに仕上げている。前後対称的デザインで、愛嬌も感じられる。このページの写真のコペン達を見てもらえれば「いかにこのコペンのデザインが素晴らしいか」…多くの言葉を要としないだろう。このデザインは、軽自動車に限らず、日本の歴代スポーツカーデザインの中でも十指に入るグッドデザインだと思う。背後から見た二本出しのマフラーも、かっこ良い。ボディカラーは、ホワイト、パールホワイト、ブライトシルバーメタリック、シャイニングレッド、ブラックマイカ、ジョーヌイエロー、ダークグリーンマイカ、ダークブルーマイカメタリックの8色から選べる。余談だが、ダイハツの塗装はたいへん美しい。
インテリアも、軽自動車っぽい安っぽさが無い。この辺は、プラスチッキーでけっこうチープだったカプチーノ、ビート、AZ-1とは、隔世の感がある。内装はブラックを基調とし、金属調は空調ダイヤルとシフトゲートのみ。3連メーターは中央にスピードメーターが、左にタコメーターが、右に水温計と燃料系。エア吹き出し口は、マツダ・ロードスターを髣髴とさせる丸型。シートはバケットタイプで、望めばヒーター付きのレザーシートも選択できる。居住スペースは、2人乗車にちょうど良い広さ。
収納スペースだが、車内にはグローブボックス、後方にネット付きマガジンラック、センターコンソールボックス(※カップホルダー兼用)があるが、大きな荷物は詰めない。しかし、後方のトランクスペースは、ルーフクローズド時は予想以上に広く(210リッター!!)、なんとゴルフバッグも一つなら収納できる。ただし、ルーフをオープンにしてしまうと、トランクにルーフが納まるのでアタッシェケース一つくらいしか入らない。しかし、バブル期軽スポーツカーと比較すれば荷室スペースは格段に広く、二人分の荷物を積んでの遠出の宿泊旅行も可能なのは、"物凄く"評価できる点だ。
輝くコペン(隣町にて)
で、最後に、コペンの最大の特徴であるアクティブトップについて。20秒以内で、メタルルーフがトランク内に格納される。その優雅な動きは、何度見ても飽きが来ない(※よく子どもとインターネットで、ダイハツのHPの動画を見ていた)。電動開閉式ハードトップは、かつてはベンツのCLKやトヨタのソアラのような高級車には採用されていたが、軽自動車ではもちろん初採用である。最近では、ベンツのSLKやプジョー206CCにも採用されているが、いずれにせよ高価なシステムである事に変わりは無い。軽自動車と言う限られたスペースで電動開閉式のハードトップを成立させるために、ダイハツではかなり苦心したようだ。10数個のモーターを巧みなタイミングで駆動させ、日本にはノウハウが存在しない電動油圧式を採用した(※余談だがソアラは電動式)。システム全体は、ドイツのベバスト社製と言う事だ。ハードトップルーフはアルミ製で、スチール製に対して6kgの軽量化を果たしている。
コペンには、アクティブトップ・タイプ以外に、ディタッチャブルトップ・タイプがある。ディタッチャブルトップは、アクティブトップと比較すると、(電動開閉用のギミック等が省略されているので)30kgもの軽量化が図られている。この軽さは、スポーツ走行には格段に有利だ。ただし、オープンで出かける時は、メタルルーフを置いていくスペースが、ガレージや車庫に必要だが…。また、デタッチャブルトップ仕様は、スペシャルチューンドサスやリヤパフォーマンスブレース、サイドデカール("Copen-s"の文字がつく)のスポーツパックが標準装備される。
コペンとマイカプチーノ(ツインリンクもてぎにて)
ダイハツのコペンは、社内の有資格者を集めた工房"エキスパートセンター"で、半ば手作りで一台一台生産されている。そして、これだけの性能を満載しているにも関わらず、価格は僅か157万3千円ほど(※現在は税込み価格表示なので分かりにくいが、AZ-1とほぼ同価格である)。設備投資は、10億円かけたと言う。このように、コペンは会社の利潤を追求する車ではない。それは、かつてのカプチーノ等の軽スポーツカーにしても同様だった。利益を追及する代わりに、自動車メーカーのイメージリーダーとなるべく存在する孤高の高性能コンパクトカーなのだ。
コペンは発売開始1周年と2周年に、それぞれ記念限定車を出している。1st Anniversary車は、レザーシートとドアトリムがタンに変更され、モモ製のウッド&レザーステアリングが標準装備になった。上質感の高い特別仕様車だ。価格は、約174万円。2nd Anniversary車は、レカロシートが標準装備となり、赤と黒のツートンカラーのモモ製ステアリングが装着された。価格は、約178万円。はっきり言ってお買い得。コペンが欲しい人は、迷わず"買い"だ。
日本の軽カースポーツ達は、いずれもオリジナリティに溢れた存在。軽日本初のMRオープンカーのビート、FRで3分割ルーフ採用のオープンカーのカプチーノ、MRで軽日本初のガルウィング採用のプチスーパーカーのAZ-1。そして、FFで軽日本初のアクティブトップ採用のコペン。いずれ劣らぬ個性派ぞろい。こんな素晴らしい車達に乗る事のできる日本に住んでいる私達は、たいへん幸せである。
追記:2014年8月、モデルチェンジした新型コペンを撮影しました。また、「新型コペンのすべて」も読みました。
マイ・コペン・コレクション
※上のコペンの中の一台(左端の黄色)は、別冊モーターファンの懸賞で当たったダイハツディーラー用の非売品です。
マイコレクションより"オープン状態のコペン"
参考・引用文献
ダイハツコペンのすべて (モーターファン別冊)
ダイハツコペン・トイブック (学 研MOOK)
ダイハツコペン・初版カタログ
軽自動車のすべて (立 風 書 房)
Kカースペシャル (立 風 書 房)
国産&輸入車購入ガイド (JAF出版情報)
他
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