スズキ・フロンテ

(2006年7月23日記載)

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 スズキは、名実ともに"軽自動車界のモンスター"。僕はこのホームページで、何度か「スズキ車好き」を公言しているが(※実際エスクードとカプチーノの現役オーナーです)、今回はそのスズキの軽自動車の原点とも言えるスズキ・フロンテを取り上げる。

 まだ"スズキ"と言うメーカーの歴史について触れていないので、ここらで一度取り上げよう。

 スズキは、1909年に足踏み式の木製織機の生産から業を始めた(1920年3月、鈴木式織機株式会社となる)。当時は、地元から東南アジアまで広く輸出していた。しかし、織機の耐久性は高くて買換え需要が低いので、1936年に自動車の研究を始めた。織機の加工技術を活かして、自動車の生産に着手した。
 スズキはヨーロッパ車を模範として、オースチン・セブンをモチーフにした試作車を製作した。しかし、翌年から軍需品や兵器製造に本格着手したために、自動車生産は見送られてしまった。
 戦後になると織機工業が不況となり、2サイクルの36ccの"自転車"取り付けエンジンを開発したが出力不足で、60ccのダイヤモンドフリーを発売した。これが大ヒットした事もあり、業種の主体を2輪車中心にすることとなった。1954年には、社名を鈴木自動車工業株式会社に改称した(※現在のスズキ株式会社に社名変更したのは1990年)。同年には、空冷2気筒2サイクル360ccエンジンを搭載した軽乗用車"スズライト"を試作し、4輪自動車の製造にも進出する。
 国民車構想に対するスズキの解答がスズライトであり、このスズライトをベースとして、本格的な乗用車として変身したのが、1955年に登場した"スズライト・フロンテ360"である。空冷2サイクルの2気筒エンジンをフロントに積む、進歩的なFF構造を持ち、スタイリングもなかなか美しかった。しかし残念ながら、このスズライトは商業的には大きな成功を収める事はなかった。

 スズキ・フロンテ(石川県・日本自動車博物館にて)

 そして、いよいよ国民的名車"スズキ・フロンテ"が登場する事となる。

 1967年には、フロンテをフルモデルチェンジした。このフロンテは、LC10と呼ばれるモデルである。"LC10のフロンテ"は、スズライトとはまったく正反対のコンセプトを持っていた。エンジンは空冷2サイクルの直列3気筒エンジンに変わった(出力は25ps)が、変更されたのはエンジンだけでなく、駆動方式もFFからRRに変更されている。この変更により、フロントの足元のスペースが広がり、リアはエンジンルームぎりぎりまでシートを下げて4人の乗員定員を確保し、最小回転半径も向上した。
 サイズは、当然軽規格内の全長2,990mm(全幅1,295mm×全高1,290mm)。車重は420kgと言うかなりの軽さだった(※参考:スバル360=385kg、ホンダN360=515kg、マツダ・キャロル=560kg)。サスペンションは、前がダブルウィッシュボーン方式で、後がトレーリングアーム方式。ブレーキは、当然前後ともドラム式だった。ボディはフルモノコック構造で、軽自動車の寸法ながらも、ロングノーズ&ショートデッキの華麗なプロポーションを持っていた。局面を多用したボディサイドには強度を高める目的もあって、アメ車にも見られた"コークボトルライン(またはダルマとも呼ばれた)"を採用して、柔らかなイメージを感じさせた。

 スズキ・フロンテSS(石川県・日本自動車博物館にて)

 1967年にホンダからハイパワーのN360(31ps)が登場すると、軽自動車の馬力競争に拍車がかかり、1968年にハイパワーのフロンテSSを発売した。36psのハイパワーを発揮した。価格は、38万7千円だった。その後のマイナーチェンジで、フロンテSSSが登場し最高速度は125km/hに達した。こうして性能は格段に上昇し、その性能は当時の2,000ccクラス車に匹敵した(※その代償として燃費は極端に悪化し、リッター辺り3~4kmしか走らなかったと言う)。
 スズキは、フロンテ360の高性能をアピールするために、1968年に英国人ドライバー、スターリング・モスらの操縦で、イタリア・ミラノ~ローマ~ナポリ間約750kmのアウトストラーダを、平均速度122.4km/hで走破し、耐久性と高速性能の確かさを見せつけた。

 時代と共にユーザーの要求が変化するのも世の常。1971年、スズキはフロンテのラインナップにパーソナルユースの2シータークーペを加えた。デザインは、なんとあのジウジアーロのものをベースに、スズキが社内で完成させた。今見てもグッド・デザインである。軽自動車のパーソナルクーペに挑戦したスズキの姿勢もグッド。エンジンは、同年発表されたばかりの水冷の2サイクル3気筒エンジンでエンジンで、37psのハイパワーを発揮した。

 LC10のフロンテのスタイリングは、たいへん個性的。コークボトル・ラインないしダルマと呼ばれるその外観は、今見ても美しい。しかし、その後のフルモデルチェンジでは、直線基調の、はっきり言って普通の軽自動車のデザインになってしまって、個人的にはとても残念。その頃から、"より快適な乗車スペース"と"より大きな荷室空間確保"のための、(現在にも続く)角型デザイン志向が始まっていたのかもしれない。
 いずれにせよ、スズキはその後、47万円のアルトや軽4WDのジムニーと言ったヒット作をリリースして、日本の軽自動車ナンバー1メーカーへと上り詰めていくのである。

スズキLC(画像提供マコトさん/無断転載禁)

 昨年2005年の東京モーターショーで、フロンテを彷彿とさせる、その名も"LC"と言うコンセプトモデルが出品された。僕が、2005年のモーターショーで最も気になったコンセプトカーだ。とてもキュートで親しみやすく、見ているだけで楽しい二人乗りのパーソナルカーである。これ実際に発売したら、絶対受けると思う。幸運にも、昨年これをデザインしたマコトさんとmixiで知り合いになる事ができました。スズキさんには、このLCを市販化してほしいなぁ。


2016年7月2日追記:隣町にまでランニングで言ったおり、フロンテのデラックスを見ました!

 










 マイ・コレクションより"スズキ・フロンテ"

 マイ・コレクションより"スズキ・フロンテクーペ(チョロQ)"


参考・引用文献
昭和の名車                  (JTBムック)
国産名車コレクション   (アシェット・コレクション・ジャパン)
日本自動車博物館説明プレート
スズキ・ホームページ
2005年東京モーターショー・ガイドブック (カートップ増刊)


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