マツダAZ-1 (スズキ・キャル)

(2006年7月9日記載)

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 軽規格スポーツカー紹介の第三弾は、マツダAZ-1(※スズキからはキャルとしてOEM供給販売)。スズキのカプチーノも、ホンダのビートも、そしてこのマツダのAZ-1も、日本の軽規格とバブル経済が生み出した時代の産物である。しかし、カプチーノは伝統的なFRオープンスポーツ、ビートはミッドシップのモダンなオープンスポーツ、そしてAZ-1はガルウィング採用のミッドシップスポーツと言う、三車三様のまったく似ていないオリジナリティ溢れる車達だった。

 「軽自動車で、スーパーカーを作ったらどうなるか?」…そんな凄く面白楽しいコンセプトが、AZ-1の生れる背景にはあった…バブル時代を象徴するようなコンセプトである。スーパーカーと言えば、流れるような流線型、かつ車高の低いデザインで、ミッドシップエンジンの二人乗りが定番。もちろん、AZ-1はそれらの要素を満たしている。それだけではない。なんとAZ-1は、ベンツSL300やカウンタックの様にガルウィングを採用したのである。カモメの羽のように開くドア…もちろん、市販軽自動車では初である。こうして、ビートやカプチーノと言ったオープンスポーツとは一線を隔す、スーパー軽自動車が誕生したのである。

 AZ-1のコンセプトモデルが発表されたのは、1989年の第28回東京モーターショー。AZ550のA、B、C3タイプが発表された(カプチーノのところでも述べたが、当時の軽規格は550ccだった)。僕も当時、特集雑誌でその写真と記事を見たが、どれも斬新なエクステリアだった。AタイプはガルウィングのMRスポーツカー、Bタイプはスパルタンな箱型のスポーツカー、CタイプはグループCカーのようなそのままサーキットで走れるようなデザインのスポーツカーだった。その中でAタイプが市販に向けて煮詰められ、マツダの販売チャンネルの一つオートザムから1992年10月にオートザムAZ-1として発売された(※この辺は、マツダ・ロードスターが当初ユーノス・ロードスターと呼ばれた事情と似ている)。


 マツダAZ-1(地元市内にて)

 車体寸法は、当時の軽規格に収まる全長3,295mm(全幅1,395mm×全高1,150mm)で、カプチーノやビートとほぼ同じ大きさ。車重は、ボディに樹脂(※プラスチックって事です)も用いて軽量化を図り、720kg。ガルウィングの機構を考えれば、軽量化はかなりがんばったと思う。
 エンジンは、スズキのアルトワークスの水冷直列3気筒DOHCインタークーラーターボエンジンをそのままリア・ミッドシップに配し、軽自主規制値の上限64psの出力を発揮する。つまりエンジンだけ見ると、カプチーノとAZ-1は兄弟車である。カプチーノやビートもそうだが、軽スポーツカーは少量生産車なので、コスト的に専用エンジンを開発できなかったと言う事情は共通している。
 AZ-1は、キャビン部にH型フレームを持つ強固なスチール製スケルトンモノコックを採用し、また四輪にストラットサスペンションとディスクブレーキを搭載した本格的なミッドシップスポーツカーだ。前後の重量配分は44対56で、リアにエンジンを積んでいる分若干リヤが重いが、それを考慮すればかなり理想的なバランスに仕上げたと思う。ガソリンタンク容量は、30リッター。
 圧倒的なターボパワーと軽快なハンドリングが魅力の、本格的軽MRスポーツカー、それがAZ-1の身上だった。

 横から見たAZ-1(秋葉原にて)

 次にデザインを見てみよう。
 AZ-1のエクステリアの最大の特徴はガルウィングだが、これは奇をてらったデザインではなく、構造上の必然であった。ミッドシップスポーツカーとして、ボディ剛性確保や側面衝突安全性能向上のために、サイドシルを高める必要があった。サイドシルを高くすると、前開きドアでは乗降が困難になり、ガルウィングドアが採用された。この辺の事情は、ベンツの300SLのガルウィング採用の事情と似ている。ガルウィングのため、窓は少ししか開かない…カウンタックを髣髴とさせる。
 また、リアにエンジンを積んでいるため、エアインテークがデザイン上のアクセントになっている。どこから見ても、小さなスーパーカーだ。
 次にインテリア。黒を基調とし、インパネはプラスチック…この辺はカプチーノと事情は同じで、今見るとややチープである。3連メーターは、タコメーターを中央に配し、左右にそれぞれスピードメーター、水温計が付き、タコメーターの横に小さな燃料系が付く。
 シートは、バケットタイプを採用。シートのリクライニングはできない(元々狭くて、リクライニングのスペースも無いようだし…)。ちなみにスペアタイヤは、シート後部に格納する(このスペースが、AZ-1の最大の収納スペースと言える)。


 後方から見たAZ-1(秋葉原にて)

 ミッドシップエンジンでガルウィングの高性能プチ・スーパーカー!…しかし現実は、そう甘くはないのだった…。軽自動車と言う限られた規格内でそんなことをすれば、必ずどこかに無理が生じるのである。ビートもそうだった。このAZ-1とて、例外ではない。この軽のスーパーカーは、ビート同様に荷物が積めないのである。同じミッドシップのホンダのビートも、小さなバッグが入るトランクスペース程度しかないが、このAZ-1のトランクスペースは更に小さいと言われる(最大の積載場所は、先述のようにスペアタイヤも積むシートの後部)。大人二人が荷物を積んでの遠出の宿泊旅行など、かなり無理な話と思われる。この車は、セカンドカーとして、峠へのドライブや近場への買い物用である(気がする)。でも、軽でここまでやってくれたAZ-1には「◎(二重丸)」をあげたい。本物のスーパーカーだって、実用性で言えば似たようなもんだからね(雨の日にはガレージから出さないとか、段差のあるファミレスは入れないとか、音が煩くて会話が聞こえないとか、etc.…)。
 AZ-1の価格は149万8千円と、ライバルのカプチーノやビートに比較して若干だが高かった(…まぁ、どれも高かったと思うけど)。また50台限定で、マツダのアドバンス実験工房"M2"が手がけたスペシャルな限定モデル"1015"も発売された。AZ-1の生産は、1994年10月、僅か2年、かつ僅か4千数百台の生産で終了した。

 こんな市販車は、日本人くらいしか作らないだろう。そしてまたバブルと言う異常な時代でしか作れなかっただろう。世界で唯一無比の孤高の存在、世界最小のスーパーカー"AZ-1"。ABCトリオを組むカプチーノやビートと同様に、確実に日本の名車史に名前が刻まれた一台だと思う。



2008年2月25日追記:マイmixiのヨッシーさんから、貴重な写真の転載の許可を得ました。ABC(※我々マニアはAZ-1,BEET,CAPPUCINOの頭文字を取ってそう呼ぶ)の3台が並び、しかも3台ともガルウィングと言う超レアな感動ものの写真です!



上の写真に引き続き、ヨッシーさんより再び貴重な写真の掲載の許可をもらいました。真中のは、AZ-1ではなくキャルです。しかし、良く見てください!なんと
イオタ風に仕上げてあるのです!全台ヨーロピアンテイストに溢れた、スーパーカー世代にはたまらない3台です。




2008年3月9日追記:F40ライクなAZ-1を地元で見ました!
リヤも丁寧にF40風に仕上げてあって、ちゃんと跳ね馬のエンブレムも付いてました



2008年7月5日追記:地元市内で上記の"F40風AZ-1"を偶然再発見しました



2008年7月1日追記:地元市内で、マツダスピードバージョンのAZ-1を見ました。



追記:2014年11月2日、隣町でAZ-1を見ました~。やっぱ、小さくて良いわぁ~。
 














 マイコレクションより"マツダAZ-1"

 マイコレクションより"往年の「ABC」軽スポーツ"
※A=AZ-1、B=Beat、C=Cappuccino

参考・引用文献
Kカースペシャル   (立風書房)
国産名車コレクション (アシェットコレクション)
カーセンサー


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