ホンダ・ビート

(2006年6月11日記載)

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 さて、ここしばらく連続でライトウェイト・スポーツカーを取り上げているが、前回からその中でも究極のライトウェイトカーたる日本の軽スポーツカーを取り上げている。スズキ・カプチーノに引き続いての紹介は、ホンダ・ビート。

 いつの世も、スポーツカーには強力なライバルがいる。そのライバルの存在により、また一層自分自身も光り輝く。エスロクとヨタハチしかり、MGBとトライアンフTRしかり、ベルリネッタボクサーとカウンタックもまたしかり。そして、ビートとカプチーノも良きライバルとして、当時競い合っていた。設計思想・コンセプト・デザイン・走り、両者はすべて違っていたが、それでもお互いの良さは認知し合っていた。
 カプチーノが伝統的なFRレイアウトを採用したのに対し、ビートはミッドシップレイアウトを採用。カプチーノが3分割メタルトップを採用したのに対して、ビートは伝統的な幌を採用。カプチーノがターボによる過激な加速を発揮したのに対し、ビートは自然吸気による気持ちの良い高回転ドライブフィールをもたらした。すべてが対照的。しかし両車とも、否定しがたい魅力をそれぞれ備えていた。どちらを選択するかは、正にその人の感性次第だった。そんな訳で、ビートを説明するに当たり、ところどころライバルのカプチーノとの比較で述べる事をお許しいただきたい。


 ホンダ・ビート(栃木県・ホンダミュージアムにて)

 ビートは、カプチーノの市販よりも早い1991年5月に発売された。軽自動車初の2シーターオープンスポーツカーとして、センセーショナルなデビューを果たした。
 最大の特徴は、軽自動車にも関わらず、ミッドシップ・レイアウトを採用した事。エンジンは、自然吸気の水冷直列3気筒SOHC12バルブのMTRECエンジンを搭載。トゥデイ用のSOHCユニットをチューニング(※カプチーノもそうだったが、少量生産車なので新たな専用エンジン開発はコスト上無理だった)し、最高出力64psを8,100回転で発揮した(トルクは6.1kgm/7,000rpmとやや低め)。敢えてターボを採用せず、高回転まで回るエンジンで気持ちの良いフィーリングを感じさせるのは、さすがホンダのスポーツカーである。ライトウェイトスポーツと言うのは、ただ速ければ良いと言うものではないのだ。
 車体の寸法は、当時の軽規格ギリギリの全長3,295mm(全幅1,395mm×全高1,175mm)と、ライバルのカプチーノとほぼ同じサイズ。一方、車重は760kgとライバルより60kgほど重い。
 ミッドシップレイアウトを採用した事により、前後の重量配分は43対57と、後部の方が若干重くなっている。しかしエンジンが後方にあるのでシート位置が前方に押し出され、ドライバーのドライビング・ポジションはほぼ車体の中央になっていてボディの4隅が把握しやすく人馬(※人車)一体となった走りを楽しめる…と言うビートならではの特徴をもたらしている。
 サスペンションは、前後ともマクファーソン式の懸架方式。ブレーキは、前後とも油圧式のディスクブレーキ。タイヤサイズは、前部が155/65R13、後部が165/60R14。ホイールは、アルミではなくスチールホイールの設定。ミッションは、5速マニュアルのみの設定。
 ビートの走行感は、ステアリングの剛性感、ダイレクト感と、気持ちの良い高回転エンジンフィールで、独特の好印象を得る事ができる。加速等のパワーではカプチーノより劣るものの、操舵フィーリングはカプチーノよりも上である、と言う意見が多い。

 横から見たビート(近隣市内にて)

 さて、走行性能の次に、デザインに目を向けてみよう。
 エクステリアデザインは、MR方式のため、カプチーノのクラシカルな外観と違い、たいへん未来的なモダンデザインとなっている。カラーバリエーションは、カーニバルイエロー、フェスティバルレッド、ブレードシルバー・メタリック、クレタホワイトの4色を用意。ルーフはメタルルーフではなく、伝統的な幌式のソフトトップを採用(※実際、幌式以外の装着はオープンカーとしてスペース的に無理だったと考えられる)。ただしルーフに幌を採用したことにより、雨の多い日本では耐久面において維持・管理がたいへんかもしれない。特に露天駐車の人には、若干辛いだろう。
 次にインテリアだが、カプチーノよりもスパルタンな印象を受ける。メーターはバイクを髣髴とさせる独立3眼メーターで、いかにもスポーティ。収納は、キー付きのドキュメントボックスや、アシスタントボックス、リア・コンソールボックスを備える。SRSエアバッグ装着車も選択できた。シートは、ヘッドレスト一体型のバケットシートを装備。ゼブラ模様のシート地だった。
 収納等に関してだが…全体的にスペース効率は悪い。ミッドシップと言う斬新なレイアウトを採用したこともあり、スペース利用に様々な弊害的な制約が出た。トランクルームは付け足し程度で、小さなバッグやテニスラケットが入るくらいの容量。バッテリーや燃料タンクの配置も少し無理があり、ガソリンタンクの容量は24リッターしかない。MR方式は、空間的に贅沢な設計を強いてしまう。正直なところ荷物スペースが無いと言うのは、二人乗車で泊り込みで遠出する時はたいへん困るだろう。一人で出かけるならともかく、二人でちょっとした買い物に行くのも苦労する。
 しかし、それらのスペース効率の悪さを補って余りある"走りの楽しさ"が、ホンダ・ビートにはある。この魅力が受け入れられれば、日常生活上の多少の苦労は我慢できるだろう。逆に、そう言う人で無いと買わない車でもある。ビートの価格は、138万8千円~146万8千円だった。ビートの生産は、1996年12月に生産が中止された。

 
 後方から見たビート(近隣市内にて)

 最後に、ビートに関する逸話を一つ。
 ビートの報道発表会は、1991年5月。そのホテル会場に、退院したばかりの最高顧問・本田宗一郎が顔を見せた。その頃の宗一郎氏は、新車の発表会に顔を見せるのは珍しかった。開発責任者の飯塚政雄がスピーチしている間に、ビートの運転席や助手席に座ったり、トランク開けたり、エンジンをのぞいたりと、細かくビートをチェックしていたと言う。ベテランの飯塚氏は、社内で怒鳴っている宗一郎氏しか見たことがない。その宗一郎氏が、最後に飯塚氏に言った。
「あんた、いい仕事をしたね」。
飯塚氏は、大いに感激したと言う。本田宗一郎は、ビート発表の3ヵ月後に永眠した。ビートは、彼が誉めた最後の車となった。

 早いもので、ビートのデビューから今年で15年目となる。今でも、街中には少なからずビートが走っている。そして、僕のカプチーノへの思いと同じくらいの思いがビートに注がれているのか…と思うと、この良きライバル車"ビート"に対して、少なからぬ"同胞者"意識を抱くのである。


2008年2月追記:マイmixiのヨッシーさんから、貴重な写真の転載の許可を得ました。ABC(※我々マニアはAZ-1,BEET,CAPPUCINOの頭文字を取ってそう呼ぶ)の3台が並び、しかも3台ともガルウィングと言う超レアな感動ものの写真です!




上の写真に引き続き、ヨッシーさんより再び貴重な写真の掲載の許可をもらいました。真中のは、AZ-1ではなくキャルです。しかし、良く見てください!なんとイオタ風に仕上げてあるのです!全台ヨーロピアンテイストに溢れた、スーパーカー世代にはたまらない3台です。




2008年2月追記:マイmixiのヨッシーさんから、貴重な写真の転載の許可を得ました。ABC(※我々マニアはAZ-1,BEET,CAPPUCINOの頭文字を取ってそう呼ぶ)の3台が並び、しかも3台ともガルウィングと言う超レアな感動ものの写真です!




2015年9月追記:大きく変身して、久々に戻ってきた新型ビートを市内にて撮影しました。たいへん精悍でカッコいいです!

 











 マイコレクションより"ホンダ・ビート"

 マイコレクションより"ホンダ・ビート"

 マイコレクションより"グーフィー・ビート"

 マイコレクションより"往年の「ABC」軽スポーツ"

※A=AZ-1、B=Beat、C=Cappuccino

参考・引用文献
Kカースペシャル        (立風書房)
カプチーノのすべて (モーターファン別冊)
ホンダ・ビート   (アシェット・コレクション)
ホンダ・ホームページ


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