スズキ・カプチーノ

(2006年5月7日記載)

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 さて、日本が誇るコンパクト・ライトウェイトスポーツカーの名車"スズキ・カプチーノ"をご紹介しよう。カプチーノを紹介できる光栄は、一車好きとしてこの上ない喜びである。

 現在のマイ・カプチーノ

 カプチーノが、世に披露されたのは1989年の第28回東京モーターショー。スズキが出品したオープン試作車"カプチーノ"。その前には、異常な人だかりがしていた。僕はモーターショーには行けなかったが、毎回必ず買うモーターショー特集の雑誌で、そのカプチーノを見た時の興奮を今でも覚えている。ショーカー・カプチーノは、当時の軽規格で、550ccエンジンで、全長は3,200mmだった。カーボンファイバー製のモノコックを採用する超軽量ボディで、先進性に満ちていた。カプチーノの開発自体は1987年に始められていて、プロジェクトチームの平均年齢は28歳と言う若さだったと言う。
 市販予定と言う噂が流れる中、モーターショー展示から待つ事2年(開発開始から4年)。1991年10月7日に、カプチーノは市販車としてデビューした(※前期型は"EA11R"と呼ばれる)。4年も開発に費やしたのに、軽オープンスポーツカーとしてのセンセーショナルなデビューをホンダのビートに奪われたのは少し残念(ビートのデビューは同年5月)。
 僕は友人と相談して(最初は共同購入だった)、カプチーノをすぐに予約したが予約待ちが凄くて(月産1,000台と言われた)、実際に手元に届いたのは翌年の1992年の3月だった。


 マイカプチーノ(購入直後に)

 さて、このカプチーノのメカニズムとその性能に目を向けてみよう。
 全長は、当時の軽規格いっぱいの3,295mm(全幅1,395mm×全高1,185mm)で、ショーモデルより若干大きくなった。重量は700kgと、カーボンを多用したショーモデルより重くなっている。ボディ強度、耐久性、安全性を考えて、スチール部品を多用したためだ。それでも、フロントフードパネル、フェンダーロワガーニッシュ、ルーフパネルやリヤピラーにアルミを用いるなどして、700kgと言う軽量化を果たしたのは立派。ホンダのビートが760kg、樹脂パーツを用いたAZ-1でも720kgと言うのを見ても分かるように、700kgと言うのはかなり軽い。ちなみに、軽規格や安全基準が変わったので一概に単純比較できないが、現代の最先端軽オープンスポーツカーのダイハツ・コペンは830kgある(カプチーノも現代規格で甦ったら、800kg前後になるかもしれない)。超徹底した軽量化を図り、ボディに樹脂(※要はプラスチック)も使用したスマート・ロードスターも820kgある。700kgが、如何に軽いかがお分かりいただけると思う。

 マイカプチーノ(完全スキー仕様/塗装前)

 エンジンは、アルトワークスから移植された660ccの水冷直列3気筒DOHCインタークーラーターボエンジン(※F6A型と呼ばれる)で、64ps(/6,500rpm)の出力を発揮する。最大トルクは、8.7kg-m/4,000rpm(※排気量も寸法と同様、ショーモデル発表当時とは軽規格が変わったので、550ccから660ccに変わっている)。エンジンパワーは軽自動車上限の64psだが、徹底した軽量化が図られているので、パワーウェイトレシオは、10.9kg/ps。この値は、軽自動車の上限パワーの自主規制値を変更するか、よほど軽いボディの軽カーが登場しない限り、今後破られる事はないだろう。
 ターボチャージャーの最大加給圧は、0.9kg/cm
3。ターボチャージャーによる加速性能の良さも手伝って、サーキット走行のラップタイム比較テストでは、初代マツダ・ロードスターより速いラップタイムを刻んだ事もある。

 白塗装されたカプチーノ(地元市内にて)

 走行性能は、軽さやエンジンパワーだけに頼っているのではない。カプチーノの良さは、FRと言う伝統的なレイアウトで、かつフロントミッドシップにエンジンを積む事により、2名乗車時で前後の重量配分51対49と言う理想的なバランスに仕上げた点。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンの独立懸架、リヤサスペンションはマルチリンク式のダブルウィッシュボーンで、つまり前後ともダブルウィッシュボーン。四輪ダブルウィッシュボーンは、軽自動車では初めてと言う意欲的な採用。タイヤは、165/65R14で、新車時にはカプチーノ用に開発されたポテンザRE96が装着されていた。標準装備のアルミホイール5J×14は、重量4.84kgと軽量化されている。
 カプチーノは走ることだけでなく、制動力も確か。ブレーキのフィーリングは、特筆もの。ブレーキは、四輪ともディスクブレーキと言うこだわり。フロントが13インチ径と厚さ17mmサイズのベンチレーテッドディスクで、リヤが同じく13インチ径で厚さ10mmのソリッドディスク。パッド材質は安定性重視で、もちろんノンアスベスト。カプチーノは、軽自動車と言う規格にも関わらず、走行性能にこだわってこれだけの装備・メカニズムを採用し、スパルタンな乗り味を可能にしたのだ。
 ガソリンタンク容量は30リッターで、満タンなら通常の走りで400km以上走った。ターボ車だが、実走燃費はそこそこ良かった。ちなみに、昨年富士五湖を回ったが、高速走行や渋滞首都高走行、下走行、エアコン・オンなど全部入れて、平均燃費が13.5km/リッターだった。14年以上経った車としては、かなり良い燃費値を達成していると思う。故障も少ないし、カプチーノは経済的でもあった。

 マイカプチーノ(各種換装&塗装後)

 カプチーノが優れているのは、その走行性能だけではない。エクステリアデザインやオープン・ルーフのメカニズムがとても良い。次に、それらを見ていこう。

 エクステリアデザインは、20世紀半ばのエランのような英国産ライトウェイト・スポーツを彷彿とさせるクラシカルな外観と、イタリアのピッコロ・スポーツを思わせる元気の良い感じを出しながらも、それらを「全体的な塊感」で見せる現代風デザインで抱合して上手くまとめ上げ、たいへんかっこ良い。軽自動車の寸法内で、こんな素晴らしいデザインに昇華したのは立派。ボディカラーは、登場時は"サテライトシルバーメタリック(銀)"と、"コバルトレッド(赤)"の2色のみだったが、1993年に"ダーククラシックジェイドパール"(緑)が追加され、また後に限定バージョンで、ディープブルーパール(紺/200台+1,000台)、サターンブラックメタリック(黒/1,500台)も発売された。
 そして、カプチーノの最大の特徴と言っても過言ではない"3分割のデタッチャブル"のルーフと、回転収納の"リヤウィンドウ&ピラー"。3分割のルーフを採用した事により、ハードトップ、Tバールーフ、タルガトップ、そして(リヤウィンドウとBピラーを回転して格納すると)フル・オープン…と四形態のルーフ形状が楽しめる。この屋根のギミックだけを見ても、カプチーノのオリジナリティがよく分かる。3分割したルーフは、トランク内に収められる。トランク自体は、決して大きくは無いが、スペアテンパータイヤも収められ、ライバルのミッドシップのビートやAZ-1よりもずっと大きい。FR方式を採用した利点である。
 カプチーノをオープンにして走る時の爽快感は、何物にも換え難い。それは、積載量や居住性を無駄にしても得る価値がある(と僕は思う)。また逆に、日本のような雨の多い国では、屋根を閉じた時のハードトップ・ルーフは(僕の実感として)たいへん助かる。

 マイカプチーノ(フルオープンにしたところ)

 インテリアデザインだが、コクピットは、ブラック系で統一されている。(正直、今ではチープに感じなくもないが)ショーモデルのスパルタンなインテリアに比べると、たいへんアダルトな落ち着いたインテリアに仕上がっていた。収納スペースは、はっきり言って少ないが、キー付きのコンソールやダッシュボードがあり、座席の後方には、ミドルサイズまでのバッグを置ける程度のスペースは確保されている。ショートなシフトノブは、いかにもスポーティな感じでカチッと決まる。シートは、シュリンクレザー張りのバケットタイプでホールド性は良く、リクライニング機構も備わる。

 発売時の価格は、145万8千円だった。利益を出す車ではないので、僕の場合1円の値引きも無かった。ちなみにエアバッグやABS、LSD等の装着車は受注生産で、169万8千円もした(つまり+24万円)。とても軽自動車とは思えない高価格だったが、それに見合う性能と内容を持っていた。

 地元市内で見かけたスポコン・カプチーノ

 1995年には、マイナーチェンジが行われた(※後期型は"EA21R"と呼ばれる)。エンジンがオールアルミ製のK6Aに変更された。前期型のF6Aは鋳鉄製のエンジンブロックだったが、軽量化や燃費向上に良いアルミブロックに切り替えた。最高出力は64psのままだが、最大トルクは10.5kg-mにアップしている。アルミエンジンのおかげ等で、車重は-10kgの690kgまで軽減した。また、今までミッションは5速MTだけの設定だったが、3速ATも設定された。AT車には、今まで限定車にのみ採用されていたパワーステアリングが標準装備された。
 シート表皮には、限定車に採用されていた撥水ファブリックが採用され、今まで無かったトランクオープナーがセンターコンソール内に設けられた。パワーウィンドウ・ロックスイッチも追加され、ステアリングホイールデザインも変更された。タイヤサイズは変わらなかったが、アルミホイールが7本スポークから6本スポークに変更された。後期型のアルミホイールの方が軽いと言う事もあって、後期型のホイールの人気が高い。
 ボディカラー・バリエーションは、シルバー、レッド、グリーンのままだったが、塗装の色質が、マーキュリーシルバーメタリック、アンタレスレッド、ダークターコイズグリーンメタリックへと変わった。1997年には、レッドが朱色っぽいフラッシュレッド、グリーンがより緑っぽいブリティッシュグリーンパールに変わった。
 ちなみに、マイナーチェンジ後のMT車の価格は据え置かれたが、AT車は+12万8千円だった。

 僕が長年理想としていたスーパーカプチーノ

 1996年には軽自動車の新規格化への移行が決まったが、カプチーノは新規格への移行をせず、1998年8月最後の7台を世に送り出し生産終了。国内総販売台数は、2万6,474台だった。ライトウェイトスポーツカーの本場の英国にも、1,182台輸出された(前期型のEA11Rのみ)。こうしてカプチーノは、ファンに惜しまれつつ、その7年の歴史に幕を下ろしたのである。

 この素晴らしいコンパクト・ライトウェイト・オープンスポーツカー"カプチーノ"は、間違いなく日本の名車の一台だと思う。


→もっとカプチーノを知りたい人は、ここをクリック!

2007年10月29日追記:マイmixiのヨッシーさんから、ヨッシーさん制作のスペシャル・カプチーノの転載の許可をいただきました。真っ白なボディとガルウィングが目を引きますが、それ以外にも外装・内装を含め細かいところまで手の入った、イタリアンテイストに溢れた美しいカプチーノです。僕も、こんな美しいカプチーノに少しずつ仕上げていきたい。



2008年2月25日追記:マイミクのヨッシーさんから、再び貴重な写真の転載の許可を得ました。ABC(※我々マニアはAZ-1,BEET,CAPPUCINOの頭文字を取ってそう呼ぶ)の3台が並び、しかも
3台ともガルウィングと言う超レアな感動ものの写真なのです!



上の写真に引き続き、ヨッシーさんより再び貴重な写真の掲載の許可をもらいました。真中のは、AZ-1ではなくキャルです。しかし、良く見てください!なんと
イオタ風に仕上げてあるのです!全台ヨーロピアンテイストに溢れた、スーパーカー世代にはたまらない3台です。
















 自作のガレージとカプチーノ

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"カプチーノ"

 マイコレクションより"往年の「ABC」軽スポーツ"
※A=AZ-1、B=Beat、C=Cappuccino

参考・引用文献
カプチーノのすべて        (モーターファン別冊)
カフチーノ・スペシャル         (立 風 書 房)
カプチーノ・カタログ


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