ダイハツ・タント

(2006年4月23日記載)

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 連続で"日本の優れた軽自動車"を取り上げているが、今回はダイハツ・タントを取り上げる。で、このコーナーは街中やミュージアム等で見かけた名車、もしくはこれから名車になると思われる車を取り上げている訳だが、「ダイハツのタントはその定義に当てはまるの?」と言う素朴なご意見があるかとも思う。僕も、それに異議を唱えるつもりは毛頭無い。
 しかしタントは、室内容量拡大を目指した日本の軽自動車界にあって、良くも悪くも一つの"帰結点"ないし"最終解答"だと思うのである。外国の車メーカーがなし得ない、もしくは初めから挑もうと思わない分野で打ち立てた"特殊なカテゴリーの金字塔"もしくは"稀有な存在"の自動車と言う意味で、今回このダイハツ・タントを取り上げてみた次第である。

 で、タントの説明に入る前に、自動車のタイプについて少し述べておきたいと思う。車のカテゴリー分類方法には色んな方法があるが、エンジンルーム、乗車室、荷物スペースの3つの区分によって分類する方法がある。一般的に、1BOX、2BOX、3BOXと言う分類方法である。下に簡単に図示してみたので、参照していただきたい。


3BOXカー、2BOXカー、1BOXカーのタイプ別の違い/分類簡略図示

 セダンのように、エンジン、乗員、荷物のスペースが3つに区切られているのを"3BOX"(※エンジンは前部と後部の場合がある)。ハッチバック車のように、乗員と荷物のスペースが同一空間で、エンジンルームだけが区切られているのが"2BOX"。そしてワゴンのように、乗員、荷物、エンジンが、同一スペースに納まっているのが、"1BOX"である(一般的にエンジンは座席の下にある)。今回取り上げるのは、この中の、2BOXカーと言う事になる。
 収納スペースだけを考えれば、1BOXカー(※一般にキャブワゴンと呼ばれる)が最大である。しかし、良い事ばかりではない。欠点の一つに、前部座席の前方にはエンジン等のスペースが何も無いため、衝突時の衝撃が直接ドライバーや助手席人員を襲うこととなり、安全上、構造設計の工夫が必要となる点。二つ目に、車体下部にエンジンを搭載することにより、必然的に車高が高くならざるを得ず安定性が損なわれ易くロール感が出るのと、着座位置が高くなるために乗り降りがしづらくなる点。三つ目に、エンジンがボンネット内にないので、個人がちょっとした整備をしたい時などはとても不便であるし、座席下にあるエンジンの騒音や振動等の面で構造上の工夫が必要となる点。逆に言うと、2BOXカーは室内スペースは限られるものの、こう言った欠点を減らす事ができると言う利点がある。

 エクステリア(※車の外観)をデザインする方向性を大きく分けると、走行性能向上を志向するスポーツカー的な"流線型"方向と、積載量拡大を志向する実用車的な"箱型"の方向に分けられると思う。積載量を稼ごうとすればするほど、ティッシュボックスを重ねたような「直方体」なデザインにならざるを得ない。市販の乗用車は、この"箱型"(※積載量等の室内空間優先)と"美しいライン"(※空力等の走行性能優先)の狭間で、どこにランディング地点を見つけるかで彷徨っているのである。フェラーリに、1BOXワゴンのように大量の荷物を積むのは無理!1BOXワゴンに、フェラーリのような走りを求めるのも無理!市販車は、その中間のどこかで折り合いを付けているのである。

 
箱型カーと流線型カーの比較

 ダイハツ・タントは、2BOXと言う制約の中で、最大のスペースを稼ぎ出そうと努力した。故に、限りなく1BOXカーの箱型デザインに近くなっている。車に詳しくない人が見たら、1BOXワゴンと勘違いしてしまっても不思議ではない。

 
タントと一般的な1BOX軽ワゴンの比較

 さて、前置きがかなり長くなったが、いよいよタントの詳細に目を向けてみよう。
 タントが登場したのは、2003年11月。そのデビューは静かな驚きを持って迎えられたが、一方では「遂に来る所まで来たか」と言う思いもあっただろう。軽カーでの室内容量拡大競争が進んでる中での終結点として、市場では迎えられたと思う。タントの最大の特徴は、徹頭徹尾その室内空間の広さである。そもそもタントと言う車名は、イタリア語で「広い」を意味するTANTOと言う言葉を使っている。タントは、「た~んと積める」軽なのだ。

 ダイハツ・タント(地元市内にて)

 広いとは言っても、もちろん軽規格枠内に収まるサイズ(3,395mm×1,475mm×1,725mm)だが、革新的なパッケージングでこれまでのトール系軽ワゴンよりも広い室内空間を創出している。全高は1,725mmだが、室内高はワゴンのノアに迫る高さがあり、前後席のヒップポイントの距離はセダンのセルシオを凌ぐ…と言う広さだ。前方視界は良く、開口部の広いドアは前後とも90度まで開き乗り降りがしやすい。
 後部座席は最大260mmもスライドさせる事ができ、(通常の前後長は42cmだが)最大68cmまで広げる事ができる。ラゲッジスペースを最大にする時は、リヤシートを床下に収納する事ができてフラットなラゲッジスペースを作り出せる。その際の床面前後長は、150cmにも達する。積載する荷物の多い時には、おおいに助かるだろう。2BOX軽カーの中では、最大の室内スペースを誇る(ただし、1BOXキャブワゴンと比較すると、前部にエンジンを搭載しているために前席は後方へ移動している分、頭上と前方の荷物を搭載できない…ある意味無駄な…スペースが広く、1BOX軽カーほどに荷物を積む事は無理である)。
 単に広いだけでなく、蓋付きの収納ボックスが随所にある。中でも僕のお気に入りな所は、薄型のティッシュボックスが丸々納まる助手席グローブボックスが付いているのと、運転席の前方にもA4サイズの地図がすっぽり入ってしまう大型のボックスが用意されている点。他にも、助手席下には前席と後席用のアンダートレイが設けられていたり、リヤシートの足元には隠しスペース(幅42cm、長さ22cm、深さ10cm)が用意されている他、カップホルダー、CDの収まるボックス、小物用のインパネボックス、ラゲッジルームの床下収納部…等の豊富で気配りの利いた収納スペースが用意されていて、大いに助かるだろう。ある調査会社の軽自動車商品性評価調査によると、タントは収納スペースの充実度などで、ライフに次ぐ2位の評価を得たと言う。

 横から見たタント(地元市内にて)

 次に、タントの走行性能について見てみよう。コンセプトが上記のようなものなので、"スポーツ走行"のような過度な期待をしてはいけない。タントの重量は870kgなので、ダイハツ・ミラ系よりも100kgほど重いので、走行性能と燃費はやや不利。とは言うものの、それは最近の車の事であるから、実用的な走行性能は十分である。直進性は良好。最小回転半径4.5m(※車軸距離がやや長いのでやや不利)。ノッポな車族の中では、ロールも穏やかな方。エンジンは、2タイプ。直列3気筒DOHCの自然吸気で58ps、ターボ版が64ps。車重があるので軽さは無いが、発進から伸びやかにかつ静かに駆け抜けていく。NAエンジン(FWD車)は、三ツ星の超低排出ガス適合車。実用燃費は、14km/リッター(ターボ4WDは11km/リッター)。乗り心地はたいへん良く、ダイハツの軽仲間でもトップクラス…との事。安全面で言えば、TAFボディは国内、欧州の衝突安全基準を余裕でクリアしている。もちろんデュアルSRSエアバッグを装備している。衝突時のブレーキペダル後退防止策は、ダイハツがいち早く軽乗用車に採用したものである。
 インテリアについては、シンプルだが機能性を高めている。シフトはコラム式ではなく、ガングリップ式のインパネシフトで、ATの操作性は良い。先にも述べたが、高めの着座位置と天地の広いフロントガラスで、見晴らしは抜群に良い。
 昨年(2005年)には、タント・カスタムも追加されている。
 価格は104万円台から153万円台と幅広く、自分の用途にあったタイプから選択が可能である。

 タントカスタム(地元市内にて)

 軽自動車は、デザインと効率の間を揺れ動いている。スバルR1のようにデザイン優先方向に振ったスタイル、そしてこのタントのように室内容量優先方向に振ったスタイル、どちらが良いとか悪いと言うような事ではなく、どちらが正解・不正解と言う事でもない。どちらが自分のライフスタイルにあっているか、と言う事なのだろうと思う。

追記:2009年1月、最近増えてきた新型タントを撮影してみました。更に使いやすく進化したようです。














参考・引用文献
ダイハツ・タントカタログ
タントのすべて (モーターファン別冊/軽自動車のすべて)
Kカースペシャル           (立 風 書 房)
国産&輸入車購入ガイド        (JAF出版情報)


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