いすず・117クーペ

(2006年2月5日記載)

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 いすずが乗用車の生産を休止(性格にはOEM供給の打ち切り)してから、すでに4年もの歳月が経った。いすずは、かつてはトヨタ、日産と並び「御三家」と呼ばれた名門であり、ヒルマンミンクス、ベレットGTRなどの名車を作り、近年ではジェミニ、ピアッツァやアスカ等の個性的な車を世に送り出していた。最近では、ビッグホーンやミュー、ウィザード等の"SUVのいすず"のイメージが強かった。

 その中にあって、いすず車の中で最も印象深い車が"117クーペ"である。1968年に登場した、スペシャリティなクーペ。その流麗な美しいデザインは、巨匠ジウジアーロの会心作。その存在感は異彩を放ち、洗練度や気品は他車と一線を隔していた。さすがジウジアーロ、と唸らせる。(余談だが、うちにも少し無理をして買ったジウジアーロデザインの20万円もしたCD電蓄があるが、やはりとても美しいデザインである)。サイズは、全長4,280mm(全幅1,600mm×全高1,320mm)。117スポーツのデザインは、イタリアの国際自動車デザイン・ビエンナーレで見事名誉大賞に輝いた。ついでに記しておくと、ジウジアーロデザインの国産車は、他にスズキのフロンテクーペや、トヨタの初代スターレット、スバルのアルシオーネSVX、いすずピアッツァ等がある。
 しかし117クーペが秀でている点は、デザインだけではない。今では当たり前になっているが、国産車で初めて電子制御式燃料噴射装置を採用したのも、この117クーペなのだ。1970年11月に発売された117クーペECは、ボッシュ製ECGIを装着していた。エンジンの状態に応じて、最適な燃料をコンピュータ制御で噴射、供給する。排ガス対策だけでなく、出力、運転性、燃費等の向上にも貢献した。
 117クーペは、当初ハンドメイドで月産わずか50台だった。直列4気筒DOHCエンジンは、120psを発揮し最高速200km/hの性能を誇った。しかし、当時172万円と言う価格は通常の乗用車の3倍近い価格(軽自動車と比較すると4~5倍の高価格)であり、一般庶民には高嶺の花であった。1973年からようやく量産体制に移行し、全車1.8リッターエンジンになり、価格もOHCシングルキャブタイプのXTで110万円ほどまでに下がった。

 117クーペ/前期丸目タイプ(石川県/日本自動車博物館にて)

 117クーペは、1977年にビックマイナーチェンジをして、丸目4灯から角目4灯に変更された。1978年末には、2リッターエンジンを搭載するスターシリーズを追加した。その後、2.2リッターのディーゼルエンジン搭載車や、内外装を専用化したXCジウジアーロもラインナップされた。117クーペは、12年以上もファンに深く愛された。
 今でも、時折117クーペを街中で見かけることがある。30~40年近く経った今でも、オーナーに大切に乗られている。日本の、否世界の自動車史に残る、名車の一台と言って良いだろう。

 117クーペ/後期角目タイプ(自宅近辺にて)

 いすずが、乗用車生産から手を引いてしまった事に、一抹の寂しさを感じているのは僕だけではないだろう。20歳台半ばの頃、中古のジェミニZZを本気で買おうと計画していた事があるだけに、尚更だ。しかし、世界の自動車メーカー達は、現在生き残りをかけてたいへんな闘いを続けている。独自性や技術力の劣る自動車メーカーは、吸収されるか消えざるを得ない運命にある。国産車も、例外ではない。
 トヨタや日産は、大メーカーとしてあらゆるニーズに対応できる車種を送り続けている。ホンダは、独特の感性とスポーティさで若いファンを獲得している。マツダは、やはりロータリーに象徴される独自なスポーティ路線でユーザーを確保している。スバルは、4WDに象徴される高い技術力と信頼性で、ファンの支持を得ている。スズキやダイハツは、軽自動車を核としたコンパクトカーのエキスパートとして、存在感を示している。光岡自動車は、あきらかに大手メーカーと一線を隔すデザインセンスで勝負している。そう言った面では、いすずの車は20世紀の最後にはその独自性、つまり他社との違いを上手く世間に提示する事が出来なかった。バブル時代の乗用車戦略が失敗した事で、1992年末、いすずは遂に乗用車分野から撤退を決めたのだった。しかし、日本ではいすずのファンや利用者は決して少なくなく、スバルやホンダからOEM調達をして(アスカはレガシィ…後にアコード、ジェミニはドマーニ)いたが、2002年遂にOEM供給も打ち切った。

 表面上はいすずの乗用車は消えてしまったが、実はGMグループ内のディーゼル開発・生産のスペシャリストとして地位を確立している。いすずのエンジンは、オペル車や英国製ホンダ車にも搭載されるなど、実はビジネスは拡大している。姿は見えにくいが、いすずの魂は今も生き続けているのである。そして、今も日本全国にいすず車を愛するオーナー達が多数存在するのである。


2012年5月4日追記:ヒストリーガレージで、117クーペを撮影しました。前期の丸目型です。















 マイコレクションより"117クーペ"

 マイコレクションより"117クーペ"

 うちの子の"プルバック・117クーペ"

 うちの子の"プルバック・117クーペ"


参考・引用文献
ドライバー/いすずの足跡  (八重洲出版)
昭和の名車         (JTB・MOOK)


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