アウディTT

(2005年7月10日記載)

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 前回まで、主にイギリスとイタリアのライトウェイト・スポーツカーを取り上げてきたが、今回からしばらくドイツのスポーツカーを取り上げたい。

 初回は、アウディTT。この車の紹介に入る前に、まだアウディ社の歴史について過去一度も触れていなかったので、簡単に見てみたい。アウディの数奇な歴史は、アウディのマークである4シルバー・リングスに刻まれている。このオリンピックのマークに1つ足りないようなデザインのリングの数が、アウディの歴史そのものである。
 アウディはラテン語で「聞く」と言う意味で、それをドイツ語で言うと「ホルヒ」となる。1つ目のリングは、1899年に創業した自動車メーカーのホルヒ社である。鍛冶屋の息子だったアウグスト・ホルヒは、工業技術学校を卒業し、船のエンジン設計の仕事をするが、すぐにカール・ベンツを訪ね、彼の工場で働き間もなく工場長に抜擢される。しかし、わずか2年で辞めて自分の自動車会社を設立し、1901年にホルヒ1号車が誕生する。1905年にはレースで優勝もする。ホルヒはレース活動を続けたかったが、経営陣は反対し、皮肉にもホルヒが自分の会社を離れる。ホルヒ社は、ホルヒの辞めた後、高級志向の自動車メーカーになつていく(ちなみに自動車開発を担ったのは、ゴットリープ・ダイムラーの息子パウルである)。
 自ら開業したホルヒ社を辞めたホルヒは、その後新たに別の自動車会社アウディ社を作る。4シルバーリングスの2つ目である。彼は、スポーツ指向の強い、革新技術とスピードを売り物にする自動車を作った。1912年から、国際競技ラリーでは3連勝もした。しかし、技術に凝り過ぎるあまり、会社経営に行き詰った。アウディ社は資金難となり、DKW社に合併されてしまう。
 このDKW社が、4シルバーリングスの3つ目である。アウディを吸収した頃は、自動車とは無縁の会社だったが、蒸気自動車の試作に手を出していた(DKWとは「蒸気自動車」のドイツ語から頭文字3文字を取った名前なのである)。さらにDKWは、バイクを作る。1928年には、オートバイ生産世界一の会社になる。オートバイで成功した勢いで、資金難だったアウディ社を合併したのである。そして、1931年のベルリン・モーターショーでは、世界初の前輪駆動自動車"DKW F1フロント"を発表している。
 4つ目のリングは、ヴァンダラー社である。1885年に自転車修理と販売を始めた会社で、20世紀に入って自転車製造で培った精密機械技術を活かして自動車製造に乗り出すのである。ヴァンダラーの小型自動車は、信頼性が高く、1912から第一次世界大戦前まで、僅か一年だが、大人気だったと言う。

フォー・シルバー・リングス

 第一次世界大戦後、ドイツは不況にあえぐ。自動車メーカーは、業界再編の波に飲まれていく。ダイムラーとベンツが合併して、ダイムラー・ベンツ社が誕生した。そして、ホルヒ、アウディ、DKW、ヴァンダラーの4社を統合して、1932年に"アウト・ウニオン(※自動車連合)社"が誕生した。4シルバーリングスは、4つの会社の象徴である。
 アウト・ウニオンは、ポルシェ博士をグランプリレースカー部門の設計技師として迎え、ダイムラー・ベンツ社と共に、ヒトラーの支援を受けながら、グランプリカーレースで戦って行く。アウト・ウニオンは、当時世界で唯一ダイムラー・ベンツ社と真っ向勝負できる自動車メーカーだった。しかし、第二次世界大戦後は、アウト・ウニオン株式会社の工場の多くが、東ドイツ領内にあったため、自動車生産が事実上不可能になってしまった。かろうじて、1945年にDKWの工場跡にアウト・ウニオン有限会社が設立され、4年後にはバンとオートバイの生産を始めた。
 1964年からは、フォルクスワーゲン・ヴェルケ社の資本がアウト・ウニオン有限会社に流れる。実は1956年からは、アウト・ウニオン有限会社の権利はダイムラー・ベンツ社が所有したいたのだが、ベンツ側とワーゲン側で話がまとまり、その権利をフォルクスワーゲン・ヴェルケ社に譲渡した。こうして、アウト・ウニオンは、ワーゲン参加に入る。
 1969年には、アウト・ウニオン有限会社にNSUが加わる(戦後25年たっても、企業再編が続いていたのだ)。NSUは、ダイムラー・モトーレン時代のシャシー製造の経験もある機械製造や自転車製造の会社である。世界で初めてロータリーエンジンの開発に成功した(いつか述べたいと思うが、真の意味でロータリーエンジン市販化に成功したのはNSUではなくマツダの功績である)が、莫大な資金を投じたため会社経営を圧迫し、アウト・ウニオン有限会社に合流することとなった。こうして、アウディNSUアウト・ウニオン株式会社と言う長い名前の自動車メーカーが誕生した。そして1985年には、社名が"アウディ株式会社"とされた。株式の59.5%は、フォルクスワーゲン・ヴェルケ社が所有した。
 しかし、1970年代のアウディは特徴を失い、注目されない自動車になっていた。この頃日本は、僕らの子供時代のスーパーカーブーム真っ只中だったが、はっきり言ってアウディ車は見向きもされなかった。
 しかし1980年3月にスイス・ジュネーブショーで、アウディ・クワトロと言う4輪駆動車が発表される(クワトロとは、イタリア語で"4"の意味である)。アウディ・クワトロは、世界初の舗装路を高速で走るための4輪駆動車である。雨に濡れた道路、冬の凍った道や雪道、砂利道などで、安全に自動車を走らせる性能を備えていた。アウト・ウニオン時代の先進技術への取り組みが、ここに蘇った。アウディ・クワトロは、1981年の世界ラリー選手権にシーズン半ばで参戦して4勝を挙げ、その威力を世界に見せ付けた。翌年には、チャンピオンを獲得している。
 最近ののアウディは(別のところでも述べたが)お洒落なイメージで、社会的地位とリンクしたステータス・シンボル的な車として売れているが、その本質は革新技術とスピードが売り物の自動車メーカーなのである。

 で、ここから、いよいよアウディTTのご紹介に入る。最近、特に欧州で大評判のアウディ車。(上記でも述べたように)アウディ車はどれもそれなりの素晴らしい走行性能の車なのだが、その中でも最もスポーツ色の強いのがアウディTTである。クーペタイプと、オープンボディのロードスタータイプがある。

 アウディTTクーペ(近隣某市内にて)

 TTはA3をベースにした2+2タイプの車で、1999年に日本への輸入が開始された。TTと言う名前は、伝説的なイギリスのマン島TT(※ツーリング・トロフィー)レースの頭文字から取られている。本格的なスポーツパフォーマンスを想像させる名前の由来である。
 座席は2+2となっているが、後部座席は狭く、実質的には2シーター・スポーツカー。しかし+2の座席を設けていることにより、急な送り迎え時のシートやいざと言う時のエマージェンシーシートとして使えるのはありがたい。2+2の座席を確保しながらも、全長は4,060mmとコンパクト(全幅1,765mm×全高1,340mm)。重量は1,370~1,550kg。
 ライトウェイトと呼ぶには重量がやや重めにも思えるが、エンジンパワーはそれを十分にカバーしている。基本的に、エンジンは1.8リッター直列4気筒DOHCターボで、2WD(FF駆動)タイプは180ps、4WD(クワトロ)タイプは225ps…同じ排気量で出力が違うのは、チューニングが違うからである。2003年には、1.8リッターのクワトロに変わり、3.2リッターのV6エンジンを搭載する3.2クワトロSラインが登場した。V6エンジンの出力は、250psである。2002年に6速ATが追加されてから、基本的にラインナップは6速AT。3.2クワトロSラインには、DSG(ダイレクト・シフト・ギヤボックス)が採用され、変速ロスを最小限に抑えたシフトチェンジが可能になっている。しかもマニュアルゲートと、パドルシフトを備えている上、ATモードを選べばイージードライブも可能と言う優れもの。足回りやブレーキも、当然強大なパワーに見合ったチューンが施されている。
 アウディTTは、いずれのタイプもファン・トゥ・ドライブが楽しめる。中でも、クワトロは全天候の高性能車で、悪天候下での高速走行も安心かつ快適と言うことだ。TTは、クィックな旋回性と優れた高速安定性を両立させている。

アウディTTクーペ・サイドビュー(近隣某市内にて)

 性能は上に述べたとおり素晴らしいものだが、同じくらい良いのがTTのデザインである。上の画像のTTのサイドビューを見ても分かるように、たいへん美しい。とてもタイトなルーフ形状の結果、最初にも述べたとおり+2の後部座席は無いに等しいのだが、この車を買うユーザーの多くはワンボックスカーを買うファミリーユーザーのようなスペース効率を求めていないだろうから、このデザインで良いのだろうと思う。僕も"独身時代"か"子供が育った引退後"なら、こう言うタイプの車を買うかもしれない(実際、独身時代に二人乗りのカプチーノを買ったし…)。キャビン室内容量優先のコンパクトカーや軽自動車の対極にある車だから、このぐらいパーソナル感に溢れたデザインは好感をもてる。

アウディTTロードスター(ソフトトップクローズ時/銀座にて)

 エクステリアだけでなく、インテリアも個性的だ。室内は、正にコクピットと呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出している。メーターやエアコンの吹き出し口等をすべて丸型に統一していて、しかもメッキのベゼルを付ける事でスポーティー感を出している。また全車がレザーシートを標準装備していて、プレミアム感も高い。ここら辺りは、さすがにアウディである。オープンタイプのロードスターはロールバーが装着されており、室内は華やかに感じられる(って、のぞいただけだけど…)。
 これだけの性能と装備だから、価格は決して安くない。値段は(かつて399万円のタイプもあったが)、現在は419万~562万円。価格的には、アルファ・ロメオGTと良い勝負である。しかし(アウディA3の時も触れたが)アウディを買う人は、+αの付加価値にお金を払っているのだと思う。その付加価値を認める人には、決して高くない価格なのだろう。


追記:2007年10月、事務所のまん前でニューTTクーペを見ました。最近の潮流に漏れず、精悍な目付きの鋭いライトデザインです。














 マイコレクションより"アウディTTクーペ"

 マイコレクションより"TTロードスター(クローズド時)"

 マイコレクションより"TTロードスター(オープン時)"

 マイウォッチコレクションより"アウディ・ウォッチ"

参考・引用文献
カーコレクション/アウディ (デルプラド・ジャパン)
メルセデスの魂/御堀直嗣著 (河出書房新書)
国産&輸入車購入ガイド   (JAF出版情報)
カーセンサー


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