MG・Bタイプ
(2004年5月2日記載)
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過去様々なスーパースポーツカーを取り上げてきたが、今回からしばらくライトウェイト・スポーツカーを取り上げていきたい。ライトウェイト・スポーツカーとは、その名の通り車体重量の軽いスポーツカーのことである。スーパー・スポーツカーは、ハイパワーのエンジン出力を活かして(多少重くともその車体を)スポーティーにドライブさせるが、ライトウェイト・スポーツカーは、エンジンの非力さを車重の軽さで補おうと言う発想。良く使用されるパワーウェイトレシオ(以後PWレシオと略す)と言う車の用語があるが、これは車体の重さをエンジンの出力(パワー)で割った数値…パワーウェイトレシオ数値が低いほど、基本的には性能の良いスポーツカーと言える(もちろん車のドライブ・バランスは、パワーだけではないけどね)。
つまり、ライトウェイト・スポーツカーと言うのは、非力なエンジンであっても、軽い車体を活かしてスポーティーな走りを可能にしたスポーツカーのことである。例えば、300psのハイパワー・エンジンを積む1,500kgのスーパー・スポーツカーと、例え100psしかパワーのないエンジンでも、車重が500kgしかないライトウェイト・スポーツカーなら、パワーあたりの重量はまったく一緒で、PWレシオは共に5.0kg/psとなり、理論上は互角な走りが可能なわけです。つまり、車体が軽いと言うことは、スポーツカーにとって大きな利点で、それを最大限活かしたのが、ライトウェイト・スポーツカーなのである。
常々、(僕はスーパーカー世代ではあるけれど)スーパーカーって、日本では無用の長物だよなぁ…と思っている。アウトバーンなんてないし(高速道路で100km/h以上出しちゃ駄目ですよぉ~)、高温多湿で雨の多い日本の夏の気候は高価なボディには良くないだろうし、そもそも狭く険しい山道が多くて、街中は渋滞も多い。イタリアなどと違って、日本はスーパーカーにとってつくづく受難な国土だよなぁ…と思う。例えば、(まだ一度もお目にかかったことはないが)ジャガーXJ220と言う超スーパーカーがあるが、パワーは542psもあるのだが、車体の長さが5メートル近くあって、空車時で1.4トン近い重さがある。こんな大きくて重いハイパワーマシンを、日本の狭い山道で自由自在にドリフトしながらスポーツドライブできる技術を持った人なんて、日本にいったい何人いるのだろう…と思う。重いということは、慣性の法則に従えば、高速時に物凄い危険も伴っていると言うことでもある。日本の山道に最適なスポーツカーの大きさって4メートル前後、大きくてもせいぜい4.5メートルぐらいが限界じゃないかなぁ…とも思ったりするのである。全長3.5~4.5メートル、車重も700kgから1トン前後ぐらいのライトウェイト・スポーツカーが、日本の険しく細い道にはぴったりの様な気がするのである。
MGB(千代田区内/新事務所近隣にて)
さて、ライトウェイト・スポーツカーの一回目は、ライト・ウェイトスポーツカーの代名詞のようなMGBを取り上げよう!どうしてこれを一回目に持ってきたかったかと言うと、僕はMGBと言う車に一つの小さな想い出があるのである。小学校の同級生に中に、ラーメン屋さんの息子がいて、遊びに行くと良くラーメンを食べさせてくれた。その頃、あまり興味の無かった魚釣りの方法を教えてくれたのも、彼だった。大学生の頃、地元の駅の前を歩いてると、後ろから僕の名前を呼ぶ声がした。するとそれは、オープンカーに乗った彼であった。助手席には女性を乗せ、自慢げに「外車だぜ」と言うのであった。新車ではなく(むしろ内装が剥がれたりして中古車らしく)、決して嫌味には感じなかった。その車がMGBだったのだ。
MGA(石川県/日本自動車博物館にて)
さて、Bタイプがあるからには、Aタイプもあったわけで、その説明から始めましょう。M.G.(モーリスガレージ)は、1928年に創業を開始して以来、おしゃれなスポーツカーの代名詞として親しまれてきた。有名なスクエア型のミジェットと呼ばれるスポーツカーに変わり、1955年にMGAが登場した。発売以来、様々なタイプのMGAが発売された。Aタイプは大好評で、1961年までに11万1,081台を生産したのである。
MGB(千代田区内/旧事務所近隣にて)
「MGAよりも人気のある車を作り出すのは不可能」と思われていたが、1962年9月に全く革新的な車が発表された。それがMGBである。MGBはMGAと同じBMCのBタイプと呼ばれるエンジンを搭載していたが、排気量は1,798ccまで拡張され、最高出力は95psとなった(MGAの1961年の最後の改良型の1600MkⅡは93psだった)。重量は、1,020kgなので、PWレシオは、10.7kg/psである。
MGBはモノコックボディで、フロアパンが応力の多くを受け持つ(※モノコックボディとは、フレームなどが応力に対するのではなくボディの構造そのものが応力に対応する構造)。デザインもAタイプの丸いデザインから、モダンなデザインへと変更された。Aタイプからは、いくつかの基本形式を譲り受けている。フロントは、ダブル・ウィッシュボーン+独立コイル型、リアは半楕円リーフで吊ったリジッド式。フロントには、オプションでスタビライザーが装備できた。ステアリングも、Aタイプと同様ラック・アンド・ピニオン、ブレーキはフロントがディスクで、リアがドラム式。
Aタイプと最も違うのは居住性。ボディ構造の変化に伴いホイールベースが短縮されたにも関わらず、コクピットは遥かに広くなった。
上記MGB・オープンにしたところ
MGBは、その後クーペモデルを追加。クーペモデルのGTは、後席が狭いながらも4人が乗車でき(ただし日本では法規上2人乗り)、後席をたたんでテールゲートから荷物を積載することもできた。
MGBは、1967年末にマイナーチェンジし、MkⅡに進化。色々と細かい改良が施される。MkⅡの生産は2年で終り、1969年にはMkⅢへと進化。変更点は、主に外観とインテリア(このためこのタイプをMkⅢと認めない傾向もある)。それ以降は、形式番号は変更されず、A、B、Cとアルファベットが加えられることとなった(Jまで続く)。
外観上、最も大きく変わったのは1974年型からで、アメリカの新安全基準に適合させるため、ポリウレタン製の大型のブラックバンパーが採用された(僕らは、通称これをケロヨン・バンパーと呼んでいた…世代がばれる)。はっきり言って、かなりかっこ悪くなり、このタイプは中古車市場でも現在評判が良くない。スタイルだけでなく、前後にオーバーハングが加わって、操縦性も悪化した。1975年には、アメリカの排気ガス対策のため、出力は65psにまで落とされた。残念なことに、こうした変更でMGBのスポーツカーらしさき、ほとんど失われてしまった。その後も、色々と変更を加えられるが、1980年に総生産台数52万2, 243台でMGBは、そのモデル寿命を終えた。ちなみに、これは当時の二人乗り小型オープンスポーツカー生産台数の世界記録である(後年、この記録はとある車に抜かれることとなるが、その車については別の機会に取り上げます)。MGの工場も、1980年10月23日に閉鎖された
MGB(石川県/日本自動車博物館にて)
ついでにCタイプにも、ちょっと触れておこう。MGBと並んで、メーカーはその後継モデルやパワーアップバージョンの計画もしていた。様々な試行錯誤の後、1967年にMGBの5割増しのエンジン・パワーをもってMGCが発売された。しかし、パフォーマンスも5割増しと言う分けにもいかず、エンジンの重さが、車のバランスを大きく崩してしまった。加重がフロントに集中し、操縦性は明らかに悪くなった。MGBよりもスポーツカーとしての魅力は低下し、1969年までの2年余りで、たった8,999が作られてフェード・アウトしてしまった。
MGスポーツカーは、その後十年以上、社会から消えていたが、MGをローバーが引き継いだ。1993年、ローバー社は2000台限定モデル、MGBのボディに3.9リッターV8エンジンを搭載したMG-RV8を発売。MG-Bデビューから30年ぶりの復活のマシンとなったこの車は、それなりのドライビング・テクニックを必要とし、ごまかしの効かないスポーツカーだった。
MG-RV8(千代田区・半蔵門にて)
そして1996年、ついにMGがMGFとなって本格的に帰ってきた。型番が、"C"からいきなり"F"に飛んでいるので、この説明を初めにしておこう。MGの"D"タイプは、プロトタイプが作られたが市販には至らなかった。MGの"E"タイプは、コンセプトカーで初めから市販化は意図されていなかった。そんな分けで、"F"タイプまで飛んでいるのである。
1.8リッターのDOHC16バルブエンジンを、ミッドに搭載。出力は、120ps。ハイドラガス・サスペンションなど、最新のメカニズムが満載。これで239万円なのだから、往年のMGファンならずとも大喜びである。翌年、145psを発揮するハイパワーの直列4気筒DOHCエンジンを積むの1.8i.VVCも登場。それより後、VVCにスーパーチャージャーを付けた200psのMGFスーパースポーツも発表された。サスペンションも、それに合わせてレース用のハードなものに交換されている。
ちなみに、MGFは1996年の第一回インポートカー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
MGF(中央区・銀座にて)
2002年には、MGFは更に進化しMG-TFとなって世に出ている。ローバー社自体は経営問題で色々とゴタゴタしているようだが、MGシリーズが今後も続く事を願うのであった。
追記:2005年6月、河口湖自動車博物館にて歴代MGスポーツカーを見ました。
MG/Mタイプ ミゼット
MG/TC
MG/TD
MG/TF
MG/A1600 Mk-Ⅱ
追記:2006年6月、隣の市でMGミゼットを見ました。
追記:2009年10月、市内でたいへん美しいMGBを見ました。感動すら覚えるほどの美しいレストアぶりでした。
追記:2010年4月、東京都渋谷区内にて、実走するMG-Aと言う超レアな珍しい光景を見ました。
追記:2015年2月、都内の神楽坂近隣のカフェでMGを見ました~。形から判断すると、MG/TDあたりかな??
マイ・コレクションより"MGB"
マイ・コレクションより"MGB"
マイ・コレクションより"MGF"
参考・引用文献
カーコレクション/MG-Bタイプ (デル・プラド)
最新国産&輸入車購入ガイド2003 (JAF出版社)
第31回東京モーターショーガイド (交通タイムス社)
第32回東京モーターショーガイド (モーターマガジン社)
第33回東京モーターショーガイド (モーターマガジン社) 他
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