スバル・360
(2002年7月18日記載)
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今回、取り上げる車はスバル360。通称、てんとう虫。まあ軽自動車なのだけど、日本の誇る名車の一台だと思う。(僕は見逃したのだけれど)NHKの"プロジェクトX"でも取り上げられたし、リアルタイムで知らない世代の人にもけっこう有名ではないだろうか?
この車は、1958年から発売され、今では考えられない10年間ものロングセラーとなった車だ。僕の生まれた年にはまだ生産されていて、子供の頃によく見かけた車の一台だ。この車は今でもエンスージアスト(※熱狂的なファン)達がいて、大切に乗られていたりする。実は僕も10年ちょっと前に、3台目の車は何に乗り換えようかと考えていた時に、この"スバル360"の中古車も候補だった(結局、ワーゲン・ゴルフを買ったのだけど)。
スバル360(お台場・ヒストリーガレージにて)
いったいこの車の何が凄いのか?結論を先に言ってしまえば、デザイン・性能・価格、どれもが凄いのである。「てんとう虫が走った日・スバル360開発物語」(桂木洋二著/グランプリ出版)を読んだのだが、開発に関わった人間たちの努力たるや並大抵のものではないのである。材料すらなかった時代、軽自動車に4人も乗せて実用で走らせる等というのは夢のまた夢だったのである。専門家の大学の工学の先生たちでさえ、無理だと考えていた。しかも40万円以下の価格…当時の1500cc小型乗用車の半値以下…で売ろうというのである。誰もが、無理だと考えていた。
スバル360(秋葉原・交通博物館にて)
今でこそ軽自動車の全長は3mプラス40cmほどだが、当時の軽自動車規格は3m。エンジンも今では660ccだが、当時は360cc。今より40cmも短く、300ccも排気量の少ないエンジンで、きっちり4人を乗せて、しかも耐久性も性能も良く、価格も安くしようというのである。これは、自動車王フォードが「1,000ドル以下で4気筒4人乗りの自動車を造ろう」としたのと似ている。当時のアメリカでは、そんなことは誰もが不可能だと思っていた。しかし、1908年フォードT型でフォードはそれを成し遂げたのだ。T型の販売台数は、最終的に1,500万台を突破し、価格も当初の850ドルからなんと260ドルにまで下げられた。スバル360が成し遂げた事は、それに匹敵するくらいのインパクトがあった。
スバル360ヤングSS(石川県・日本自動車博物館にて)
詳細は、"プロジェクトX"や前述の"スバル360開発物語"に譲るとして、スバル360は1958年に発売された…奇しくも、フォードT型発売からちょうど50年目だ。わずか全長2m99cmのボディに4人の大人を乗せ、小型乗用車でさえオーバーヒートしてしまうような山道をも上り切る動力性能と足回りを与えられて、堂々と登場したのだ。強制空冷2サイクル並列2気筒エンジンは、16ps/4,500rpmを絞り出し、わずか385kgしかない車重を時速83kmまで引っ張った。燃費消費率は、1リットルあたりなんと26kmである!!トーションバーを採用したり、その他数々の技術的難題に挑戦して、とても軽自動車とは思えない運動性能を発揮した。そして何より、その愛らしいデザインは今でも十分に斬新で素晴らしいものだ。価格も、当初の42万5千円からその後36万円にまで引き下げられた。
歴代スバル360(石川県・日本自動車博物館にて)
先日、ディスカウント・ストアの駐車場で、スバル360を見かけた。数多くの車が密集していても、てんとう虫は一際目立つ。小さくとも古くとも、一目で分かる存在感!今の軽自動車は、より高性能でより大きく(そしてより高価格に)なったが、スバル360を超えたKカーが果たして何台あったろうか?
近所で現役で走るてんとう虫を見ました…きれいに乗っています
※CGで作ったスバル360を見てみる
追記:2003年7月、ホンダミュージアムにて"スバル360"を見ました。
追記:2005年6月、河口湖自動車博物館にて"スバル360"を見ました。
追記:2009年8月、お台場ヒストリーガレージにて整備中の"スバル360"を見ました。
追記:2013年7月13日サイクリング中、隣町できれいにレストアさせて大切に乗られているスバル360を見ました。スバル360は、どれも愛されて乗られているのが良く分かります
追記:2016年11月16日、江戸東京博物館にて、スバル360を見ました。
追記:2019年3月9日、ライド中にビートルと仲良く並んだスバル360を見ました。
マイ・コレクションより"スバル360"
マイ・コレクションより"スバル360"
マイ・コレクションより"スバル360"
うちの子供の"プルバック・スバル360・ヤングSS"
参考・引用文献
てんとう虫が走った日・スバル360開発物語 (グランプリ出版)
スバル360/待望の国民車登場 (モーターファン別冊)
昭和の名車 (JTBムック)
国産名車コレクション/スバル360 (アシェット・コレクション・ジャパン)
他多数