入口 >トップメニュー >ワインとCGと祈り >現ページ

JOLLYBOYの脳内討論 03 環境問題を考える

(2011年7月24日記載)

司会ノンデル:「脳内討論の第3回、司会のユンケル・ノンデルです。さて、今回のテーマは"環境問題"です」。

脳の前方真ん中の人:「あれ?サンケル・マイデル先生は、どうしたんですか?」。

ノンデル:「真ん中の貴方のことは、サンケル先生から聞いていますよ…余計な発言で、3回の発言の一回分を棒に振る方ですね。サンケル先生は今たいへんお忙しいので、一番弟子の私が今回は司会を務めさせていただきます」。

ノンデル:「さて、ご存じの如く環境問題は、今や待ったなしの深刻な状況です。環境問題の現状、将来の展望など、色んな観点から討論をお願いいたします」。

脳の左側の人「一般に"環境"と言う時、"社会環境"と"自然環境"の二つに大別できますが、もちろん今回の討論は"自然環境"の破壊に関することでよろしいですね?あともう一つ、自然環境の破壊と言っても、火山の噴火や地震や津波、隕石の衝突と言ったものでも大きな自然環境の破壊が起こりますが、今回取り上げるのは、人間がもたらした破壊に限定してよろしいですね?」

ノンデル:「貴方のこともサンデル先生から聞いていますよ…教科書的な発言をする傾向が高いとか。ええ、その方向で討論を進めていただいてけっこうですよ」。

脳の左側の人「では、続けさせてもらいます。人類による自然環境の破壊は、古代文明の頃から局地的にはありましたが、全地球規模の自然環境の破壊は、産業革命以後…その中でも特に20世紀以降に顕著になってきたものです。自然破壊の最大の要因は、人口の爆発的増加です。この"人口の圧力"と"限られた資源"が自然環境の破壊を引き起こしているのは確実だと思います。昔から人間は自然から"恵"をおすそ分けしてもらって生きてきた訳ですが、そのもらう量がもはや自然の自浄力や回復力の許容範囲を超えた"略奪"や"強盗"に値するところまできていると言ってもよいでしょうね」。

ノンデル:「なるほど。他に意見は無いかな?右側のあなた、どうぞ。君は、ラジカルな意見の傾向があるそうですね?」

脳の右側の人:「僕の意見が急進的かどうかは分からないですけれど…。急激な人口爆発が自然環境破壊の最も大きな原因であることについては、左側の彼に同意しますよ。人類の人口は有史以来緩やかな増加で、数千年間に数億人しか増えていなかった訳ですが、それが今や70億人に達しようとしています。1800年当時には10億人もいなかったのに、たった2世紀の間に7倍ですよ!これだけの人口を養うのに、人類は山を切り拓いて道路や宅地を造るし、森林は焼いて畑にするし、谷をダムの底に沈めて水資源を確保するしし、地下資源や海洋資源を競い合って枯渇させるし、たくさん作った工場からは有害な物質を出すし、資源や土地の奪い合い戦争で有害な兵器を使いまくるわけですから、自然環境が破壊されるのは当然です。人口はもっと増えると試算されていますが、人口が100億人に達したら果たして地球はそれを支え切れるでしょうか?」

ノンデル:「何となく総論と言うか概論っぽい意見が続いていますが、もう少し具体的な意見がある方はいないかな?はい、真ん中の君!」

脳の前方真ん中の人:「森林の破壊、温暖化に大気汚染やオゾン層の破壊、水の汚染や土壌の汚染…自然環境の破壊で深刻なものはたくさんあるけれど、最も深刻な物は、動植物の種の絶滅じゃないかな…。大気や海洋の汚染と言ったものは、自然の浄化能力で長い時間をかければ回復する余地はあるけれど、種は一度絶滅してしまったら、二度と戻らないからね…。17世紀には20種が絶滅し、18世紀には23種が絶滅。19世紀に入ると一気に増えて78種が絶滅しているし、20世紀はそれをさらに上回る種が絶滅してしまって…2002年のレッドデータブックの絶滅危惧種は、11,000種類以上上げられているよ」。

ノンデル:「はい、右の君」。

脳の右側の人:「もちろん動植物種の絶滅は大問題だけれど、自然環境の破壊は相互に関連し合っているから、もっと大きな視点で考える必要があると思うよ。動物が滅ぶのは、密猟者が狩りをするだけが要因じゃないからね。一例を挙げると、企業や国家や個人が事業のため、ジャングルを焼いたり枯葉剤を撒いたりして、農地や牧場にしたりハイウェイを作ったりする。かつて大企業のF社が、11万ヘクタールもの熱帯雨林を枯らした例もあるよ。ジャングルを無くすと言うことは、そこに棲息していた希少な動植物も永久に失うと言うことだ。もう一例を出すと、北欧やヨーロッパなどで、車の排ガスなどが要因の酸性雨で広範な森林被害が出たり、川や湖から魚が消えてしまったところもある。もっと色んな具体例を挙げられるけれど、つまり僕が言いたいのは…自然と言うのは、奇跡的な微妙なバランスの上に成り立っていて、何か一つが崩れると他も崩れてしまう。自然環境破壊は、それぞれの要因が縦糸と横糸のように相互に関連し合っているから、全体的に見ないと解決は難しいと思うよ」。

(ノンデルが左の人を指す)。

脳の左側の人:「さっき、自然環境破壊の大きな最大要因は"人口の爆発"って言ったけれど、もっと具体的に言うと、人間の経済活動が原因だよね。貧しい農民が、食べていくために森林を焼いて農地にして、結果として土地が砂漠化する。企業が、利潤を生むために大きな工場を建てて、結果として水や大気や土壌の深刻な汚染を引き起こす。全部、経済活動がその中心にあるよね?この経済活動とどう向き合うかを考えることが、自然環境破壊を食い止め保全と回復するためには絶対必要だと思うんだ」。

ノンデル:「討論のテーマが、"自然環境破壊ストップ"の問題に移ってきたね。意見のある方は?はい、右の君!」。

脳の右側の人:「企業は経済活動を営む時に、最低コストで最大利潤を目指すよね。そこでどうしても、コストがかさむ安全性などが犠牲にされてしまう。日本の高度成長期に各地で見られた水の汚染や大気汚染、土壌破壊などは、すべて企業が汚染物質の除去や自然環境の保全を怠ったせいだよね。それで日本の各地で公害病と言われる様々な健康被害が引き起こされた。東日本大震災の福島の原発事故も同じ。色んな専門機関や学者から以前から危険性が指摘されていたのに、安全対策のコストを惜しんで、結果としてその原発が生み出すエネルギーの額よりも莫大な…おそらく国家予算規模の…事故処理&補償費用がかかることになってしまった。これから起こるであろう健康被害や自然環境に対する影響は、想像もつきません。だから、自然環境問題を考える時、経済活動を秩序づける国家の政策、つまり法律と言うものがとても重要になると思うんだ。それに、自然環境の破壊は、一国の問題じゃ済まない。車の事故や家の火事はその個所だけで済むけれど、オゾン層の破壊は世界中の人々の健康に影響するし、南極の氷が溶けたら消滅する国だって出てくるし、原発事故は世界中に甚大な被害をもたらす。放射性物質などは、私たちが滅んだ遥か未来10万年後も高い毒性を持って存在し続けるし。だから、環境問題はもはや一国のその時代だけの問題を超えてしまっているから、国際的なルールの取り決めや協力も必要だよね」。

(ノンデルが真ん中の人を指す)。

脳の前方真ん中の人:「それについては、最後に僕も一言言いたいな。今、環境問題がグローバルな重要課題になっているので、"これは環境問題ですから"と言う大義を掲げられると誰もなかなか反対できない。"これは聖戦ですから"みたいな戦時中の大義名分に似ているよね。でも、実はその法案は特定の業者に利益をもたらすだけで、環境問題にはほとんど役に立っていないことが多かったりする。身近な一例を挙げると、ペットボトルを分別して回収するでしょ?あれは、リサイクルが建前で回収している。でも、実はペットボトルは、コストや手間の問題からほとんどリサイクルなんてされていない。でも、業務を代行した業者に代金は確実に入る。リサイクルされないけれど、行政は"それは民間に任せていることですから"と言うことで、行政側の問題でないと主張する。要は、官僚の"良い所取り&責任逃れ"的な作文法案なのね。マスコミの報道も、安易に官僚の情報に"右へならえ"状態。こう言った事が、あちこちで起こっている。企業の経済活動の安全に対するコストは法律で基準を保たせる必要があるけれど、自分の選んだ国会議員がどう言う理念で環境に関する法律を作ろうとしているのか、官僚の言いなりなのか、法案は本当に有用なのか、そう行った事を市民一人一人がちゃんと見て考えなきゃいけないと思うよ。もちろん、市民一人一人が環境保全意識を高めるのも重要だけどね」。

ノンデル:「みんな3回ずつ発言したね…色々な意見をありがとう。環境問題は待ったなしの課題ですから、これからも考え続けてくださいね。では、また次回!」

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

新品価格
¥972から
(2014/11/8 15:14時点)

 

哲学の使い方 (岩波新書)

新品価格
¥864から
(2014/11/8 15:16時点)

 

不都合な真実

中古価格
¥89から
(2014/11/8 15:49時点)

 

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks)

中古価格
¥1から
(2014/11/8 15:46時点)









主な参考・引用文献: 「不都合な真実~ECO入門編」(アル・ゴア著/枝廣淳子訳/ランダムハウス講談社)、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(武田邦彦著/洋泉社)、西暦2000年の地球1~アメリカ合衆国政府特別調査報告/人口・資源・食料篇(家の光教会)、西暦2000年の地球2~アメリカ合衆国政府特別調査報告/環境篇(家の光教会)、大自然~その驚異と神秘 大切な遺産を守ろう、自然の窓他(日本リーダース・ダイジェスト社)、大気汚染(ポール・ショヴァン、アンドレ・ルーセル著/白水社)、恐るべき公害(庄司光、宮本憲一著/岩波新書)、公害摘発最前線(田尻宗著/岩波新書)、瀬戸内海汚染(星野芳郎著/岩波新書)、気候変動と人間社会(朝倉正著/岩波現代選書)、都市が滅ぼした川(加藤辿著/中公新書)、水と緑と土(富山和子著/中公新書)、アメリカの野生動物保護(藤原英司著/中公新書)、砂漠に緑を(清水正元著/中公新書)、緑の守り手がいなくなる(吉藤敬著/都市文化社)、私の公害闘争(宇井純著/潮新書)、世界紛争地図(アンドリュー・ボイド著/創元社)、Newton 1981年7月~1986年12月号~サイエンスセンサー、スペシャル、自然への眼差し他(教育社)、Common・Sense 1986年2月号~アマゾンが消えていく(教育社)、Common・Sense 1986年3月号~世界の環境危機~人間は地球に何をしてきたか(教育社)、他多数